思春期の繊細さや不安のコントラストが秀逸
■作品名ゴーストワールド
■作者名
ダニエル・クロウズ
■出版社
PRESSPOP INC
■おすすめの理由
アメリカの都市で、高校卒業後、特にやることもなく退屈な時間を過ごすイーニドとレベッカの物語。この年代特有の、目に入るものを片っ端から批判していくシニカルな会話、枯渇することのない悪ふざけのアイデア、それでも悩んでいる人生のことなど。明るくないのにリアルでどこかみずみずしくさえある日々は、まさに青春時代。また、まとまりのない(おそらくまとめようとしていない)エピソードが、逆に青春ってこういうものだよな、と思わされるのです。
シニカルで極端な性格のイーニドに引っ張られながら、いつもいたずらにつき合うレベッカ。このコンビが繰り出す、ちょっと陰険ないたずらの数々がとにかく笑えます。出会い系の記事を出した男性を呼び出してその様子を同じレストランで見ていたり、2人の共通の友人ジョシュに用があるときもないときも、姿を目にすれば卑猥な言葉をかけたり、それにジョシュがすっかり慣れきってたり。また、人に心ないあだなをつけたり、空想で他人を決めつけ評価したり、と、悪ふざけが止まらない。
そんなふてぶてしい言動の一方で、出店したガレージセールそっちのけでとこかに行ってしまったのに、子どものころ繰り返し聞いた思い出のつまったレコードをやっぱり手放したくなくてダッシュでガレージセールに戻ったり。作中にちりばめられた、この時期特有の根拠のない自信と、すぐに粉々になってしまうような繊細さや不安のコントラストが秀逸。