躍動感あふれる美しい絵の新体操物語
■作品名光の伝説
■作者名
麻生いずみ
■巻数
全16巻
■おすすめ理由
『光の伝説』は主人公・上条光が新体操の選手として力をつけ、ソウルオリンピックに出場するまでの物語。新体操を題材としているため、躍動感あふれる美しい絵がふんだんに使われながら物語が進んでいき、爽快感があります。
この漫画では、選手たちの生活の中にある新体操以外の部分、たとえば選手同士の軋轢、
よき伴奏者との出会い、他国の選手や優れた指導者との絆、恋愛模様なども丁寧に描かれていて、読み応えがあります。物語の終盤に差し掛かり、上条光が「日本人なので、歌舞伎の動きを取り入れたり、桜などの日本的な題材を扱ったり、日本らしい演技をしていきたい」と思うようになったことには、様々な人との出会いと別れが大きく関連しているのではないでしょうか?
また、「新体操以外の部分が丁寧に描かれている」だけに、読者は上条光の抱える事情を知ってしまい、同情的になることもあります。
たとえば、上条光が演技の直前に、レオタードにジュースかペンキのようなものをかけられ、
怒りに震えるシーンがあります。しかし、怒りをそのまま演技に出してしまったら、曲のイメージと噛みあいません。このとき上条光は、憧れの先輩・大石誉昭の助言で落ち着きを取り戻します。
でも、もし私がそのような立場であったら、憧れの先輩に一言、二言かけてもらっただけでは怒りがおさまらないか、あるいは恐怖で動けなくなっているかもしれません。
オリンピックや世界選手権などに出場する選手たちには、様々なトラブルが起こりうるでしょう。
彼らは、肉体を磨くとともに、トラブルを乗り越えられるよう精神を鍛えているのだと、改めて実感させてくれるシーンでした。
以上のように、美しく躍動感のある絵で展開される漫画として、そしてアスリートの心身の強靭さを実感できる漫画としても、『光の伝説』はおすすめです。