基本は建物の水平、垂直ラインをまっすぐに
大屋根の横一線のラインをフレームに水平にして撮影。フレームに対して水平になっていることで建築物の存在感がより見える写りに。
建物には水平と垂直のラインがあり、これをまっすぐになるように写すのが建築撮影の基本となります。
この水平と垂直ラインをすべてまっすぐに撮るためには、専用のレンズまたはカメラが必要。コンパクトデジカメなどのズームレンズを使って撮影する場合は、まっすぐに撮ったつもりでもどこかに歪みが生じます。これはレンズの持つ特性から出る現象。
しかし、一般的なズームレンズを使っても水平または垂直ラインのどちらかを意識して撮影するだけで見栄えがよりきれいな写真になります。
ここでは、広角から望遠までの画角幅を持つ標準サイズのズームレンズを使って建物を撮影する前提で解説していきます。
まず、建物の水平と垂直のラインのどちらかに主軸を絞ります。その選択方法は、被写体の建築物が横に広いものなのか、縦に伸びるものなのかで分けます。横広の建物なら水平ラインを、縦長であれば垂直ラインを軸にします。
水平もしくは垂直どちらのラインを軸にするのかを決めたら、その建物の中にある最も大きく見える水平もしくは垂直のラインを見つけます。例えば、寺院などの建物であれば大屋根の水平線を、ビルのような建物であればビル枠の垂直線という具合。
その目印と決めた水平もしくは垂直線をフレームの中に水平、垂直になるようにフレーミングします。ただ、フレームに対してまっすぐにするのはやや難しい作業。できれば、フレーム内に水平、垂直のラインを表示させて、それに合わせて撮るとまっすぐのラインを保ちやすくなります。グリッドラインなどフレーム内に表示させれば撮影しやすくなります。
建物の大屋根の水平線はフレームに水平にしたが、下のある門や道路のラインがフレームに対して曲がって写り、全体に歪曲した感じになった例。建物以外のラインにも注意が必要。
また、建物の水平、垂直ラインをフレームに対してまっすぐにしたつもりでも、画面の中にある他のラインが曲がって写り全体的に歪曲して見えるようになる場合もあります。この場合はできるだけ建物以外のラインをフレーム内に入れない工夫をします。建物から少し距離を取り離れた場所からズームレンズで望遠で寄せて撮るという方法などが効果があります。
水平、垂直ラインがピシッと決まった写真は見ていて気持ちよく見えます。
近づき過ぎると全景は撮れない
建物との距離が近すぎると全景は写らない。この作例では、屋根の部分がほとんど写っていない。全景を撮る場合は、建物より少し距離を取って撮影するのがよい。
建物の全景を撮影するときに気をつけたいのは、あまり建物に近づき過ぎて撮らないこと。
建物に近いほうがよく写るだろうと、近距離からズームレンズのワイド側を使い撮影すると上の屋根の部分などは写らなくなることがあります。
ズームレンズのワイド側で撮ると、手前にあるものは大きく、後ろにあるものは小さく歪んで写る傾向があるので、建物の形をきれいに撮る場合にはあまり向きません。
全景を見た目通りに撮りたい場合は、建物からある程度距離を取って撮影するのがポイントです。距離の取り方は、建物の大きさにもよりますが、全景の建物の形が見渡せる場所を目安にするのがポイントです。
建物に近すぎると見上げてしまい、手前の部分しか写らなくなるということを覚えておくといいでしょう。
立体的に撮るには斜めから狙う
斜めから撮ることで建物はより立体的に写る。斜めから側面も見える位置から撮影する。撮影位置によって見え方が変化していくのがポイント。
建物を立体的に撮るには、建物が斜めから見える位置から撮影します。
四角いビルなどは真正面から見るとやや平面状に写ってしまうことがあります。建物らしさを見せるためには、立体物であるように撮ります。そのためには、正面と側面が見える斜めから撮影するのがポイントです。
建物が真正面に見える位置から左右のどちらかに立ち位置を移動します。側面が十分に見える位置になったら建物全体を見渡し確認します。ちょうどよい場所であればそこから撮影をします。
左右によって見栄えが変わる建物や左右どちらかに視界を遮る建物などがある場合があるので、状況をよく見極めてどちらの方向から撮るのかを決めることも大事になります。
また斜めから撮るときも水平または垂直のラインに意識してフレーム作りをすると建物がきれいに見える写りになります。
今回ご紹介したのは簡単なポイントですが、これらを意識して撮影するだけでも建物の写真の見栄えはグンッと引き立ちます。