そもそも放射線(放射能物質・放射能)とは
ジャガイモの発芽抑制のためにも放射線照射が行われる(環境科学技術研究所Hpより)
一体、放射線とは何で、体にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
懐中電灯から光が出てくるように、放射性物質から放射線が放出されます。一般的に放射性物質は放射能と呼ばれることもあるので、放射能から放射線が出てくると言うこともできます。少し抽象的に聞こえるかもしれませんが、放射性物質(放射能)はエネルギー的に不安定な状態の物質で、そこから自身でより安定的な物質に変化しようとします。その際に放出されるのが放射線です。一言で放射線と言っても、その種類によって「α線」「β線」「γ線」などいくつかの種類があります。
放射線被曝は「被曝量」が問題
被曝に関する影響について議論するとき、一番大事な前提は、「被曝量」が問題であるということです。日常に存在する様々なリスクと同様に、被曝が「ある」か「ない」かの問題ではありません。実は、人類で被曝をしていない人はいません。地球上には放射性物質が多く存在し、そこから生じる放射線によって、我々は日常的に何らかの形で被曝しているのです。日常的な食べ物からの放射性被曝
スイセン含まれる放射性カリウムからの放射線が板に映し出される (文部科学省の放射線副読本より)
我々の体を調べれば、放射性カリウムが含まれていない人間はいません。カリウムというのは人間の生命維持に必須のもので、例えば心臓の電気信号の調整を司っており、カリウムの値がおかしくなると心停止などの重大な事象につながることもあります。カリウムの中の一部に放射性カリウムが含まれており、その放射性カリウムから我々は常に被曝をしています。
日常的な大地からの放射線被曝
大地には色々な鉱物が含まれていますが、その中にも放射性物質が含まれていて、放射線が発せられています。空間に飛び交っている放射線がどの程度か調べると、空間線量率がゼロになるような場所は、我々が日常暮らしているような場所にはありません。やや余談になりますが、放射性物質がどの程度大地に含まれているかはまちまちです。ですので住んでいる場所によっても日常的な被ばく量は異なります。鉱物の量や種類によって、日本の約数倍の年間被ばく量があるところすら存在します。一般論ですが、東日本と西日本を比べると、西日本の方が空間の線量が高い場所が多いこともよく知られています。
私は福島県の相馬市の町中に住んでいますが、ここの空間線量は原発事故の影響を受けたとはいえ、私の実家がある大阪のとある地区の線量とあまり変わりません。
被曝量によるリスクは0か1では計れない
食物や大地だけでなく、空気中にも放射性物質が存在しています。呼吸をしている限り、常に放射性物質を肺の中に取り込み被曝している、とも言えます。もちろんこれは、東日本大震災による原発事故によってもたらされた結果ではありません。昔、地球が生まれた時から放射性物質が我々の身近にどこでも存在しているのです。ですので、例えば「○○を食べたせいで、被曝してしまった」といった初めて被曝したかのような表現は正しくないのです。
だからといって、昔から被曝しているから被曝は全く問題が無い、といってしまうとそれも間違いになります。被曝量が多くなると、体のあちこちに影響が出たり、癌になる確率が上昇したりというリスクがあることも確かです。
まずは放射性物質のリスクがあるかないかは、0か1かという話ではなく、量の問題であるということをしっかり押さえていただければと思います。