Eタイプ以来、渾身の2シーターオープン
モダンスポーツカーの原点は、おそらくジャガーEタイプであろう。それまでのクラシックなフォルムから一転、流麗なロングノーズ・ショートノーズスタイルを手に入れて、世界中のクルマ好きに衝撃を与えた。1961年のことである。
その後に登場したトヨタ2000GTやフェアレディZのデザインに、Eタイプの影響が強く出ていることをみても、その衝撃の強さを想像できるだろう。
(同じイギリスのベントレーやアストンマーティンと違って)アフォーダブルなスポーツカーを生み出すブランド、ジャガー。そんな初期のブランドイメージへの原点回帰ともいうべきモデルが、このFタイプである。
ジャガーといえば、すでにXKシリーズというスポーツモデルがあるが、こちらは2+2の、どちらかというと豪華なグランドツーリングカー。FタイプはXKシリーズよりもコンパクトなサイズに、ほとんど同等のパフォーマンスを詰込んだジャガー渾身の2シーターオープンスポーツである。
ジャガーにとっては、本当に久しぶりの、Eタイプ以来の、本格スポーツカー登場、というわけなのだった。
日本仕様のFタイプは今のところ2グレードのみ。V6スーパーチャージドを積むFタイプと、V8スーパーチャージドを積むFタイプV8S、である。
このスタイルを間近に見せられて、“格好いいスポーツカー”だと思わない人など、いないだろう。Eタイプの再来、とまでは言わないが、少なくとも、Eタイプの次=Fタイプという名前の意気込みのほどが、伝わってくるスタイリングだ。
フロントセクションこそ、当代流行りのフィニッシュで、個性にやや乏しいと思ったが、リアセクションは圧巻のひとこと。艶かしく張り出したフェンダーに、鋭く尖ったリアコンビランプ周り、そして力強く突き出されたエンドパイプ……。スポーツカーは、迫り来る姿よりも、追い抜き様が肝心、というわけである。この後塵なら、いくらでも拝したい、という人もいることだろう。
ちなみに、フルオープンにかかる時間はおよそ12秒。2シーターソフトトップの恩恵である。交差点での信号待ちでもあわてることなく開閉できるし、万が一、途中で走り出したとしても、時速50km/hまでは動作を続けることができる。
助手席に女性をのせてしまうと、ちょっと申し訳ない気持ちになるかもしれない。「1+1」コンセプトと呼ばれるコクピットスタイルは、運転席を取り囲むようなデザインになっていて、他のスポーツカーに比べても、助手席の疎外感が大きい。甘いデートには、XKシリーズの方が向くだろう。
走り好きの辛口デートなら、お手のものだ。
ひと言でいうと、グランドツアラー寄りではあるけれども、よくできたスポーツカー、であった。猛々しいサウンドの演出や、前アシのさばきの軽やかさ、後アシのねばり強さ、前後重量&サイズバランスからくる機敏さと自在さ、は、スポーツカーとして楽しむに十分な資質だと言っていい。
自史の解釈に誤りがなく、決してモダンさも忘れることがない。要するに“ジャガーらしい”という表現が、この50年間で最も似合うスポーツカー、であった。