上原が打たれない訳は、持ち味の制球力と、初球にストライクがとれること
「気を引き締めるというか、何も変えることなく準備して、やることが大切だと思います」と平常心を強調する上原に全く心配する必要はない
9月6日(日本時間7日)のヤンキース戦で九回の1イニングを三者凡退に抑えた時点(64試合に登板、3勝0敗18セーブ、防御率1.12)で、24試合、27イニング連続無失点。しかも、8月17日(同18日)のヤンキース戦の九回二死にライル・オーバーベイに二塁打を許して以降、27人連続でアウトに仕留めている。これにはレ軍のジョン・ファレル監督も「これで完全試合だね」とジョークを飛ばす。
上原は、オリオールズ時代の2010年7月~2011年4月にはメジャー歴代3位の36試合連続無四球、レンジャーズに所属した昨シーズンも打者有利の球場を本拠地にしながら防御率1.75をマークした。そして、この3週間越しの“パーフェクトゲーム”で、メジャー5年目にしてついに全米に認知されたといえる。
上原の凄さはどこにあるのだろうか。オリオールズ時代から上原を知り、8月に二塁打を放ったオーバーベイはこう解説する。
「95マイル、96マイルの真っすぐを投げるわけでもない。その真っすぐが沈むわけでもカットするわけでもない。でも、なぜか打てないんだ。丁寧に両コーナーに投げ分けてくるコントロールが素晴らしいからだと思うけどね」
制球力がいいのは間違いない。上原の場合、ただの制球力ではなく、ストレートはピンポイントで投げられるコントロールを持っていることと、フォーク(正確にいえばスプリット・フィンガード・ファーストボール)も制球できることだ。フォークは通常、ボールの挟み具合で落差は調整できるが、ストレートのように制球するのは難しく、どちらかといえば「ボールに聞いてくれ」となる。ところが、上原はそのフォークもピンポイントに近くコントロールできるのだ。そのため、決して速くはないストレートにも打者はタイミングが取れなくなるのである。
もうひとつは、初球にストライクが取れることである。メジャーリーグの投手コーチは「初球にストライクを取れ」とうるさく言う。それは、打者に対して優位に立てることと、初球にストライクを取れる制球力と勇気を持つ投手が少ないからだ。上原は初球からどんどんとストライクを取り、ストライクを先行させ、打者に余裕を与えない。これに打者の弱点データと、38歳のベテランならではの経験が加わるのだから、打つことが難しいのは当然だろう。
レ軍は6年ぶりのア・リーグ東地区優勝はほぼ確実、2007年以来の世界一も見えてきた。そんな中でも「気を引き締めるというか、何も変えることなく準備して、やることが大切だと思います」と平常心を強調する上原に全く心配する必要はない。