電気自動車(EV)の先頭を走るテスラ(TSLA)
約6万2000ドルのステラの最新車「モデルS」
自動車の街・デトロイトが破綻した一方で、自動車とは無縁だったインターネット・テクノロジーの地、カリフォルニア州シリコンバレーの電気自動車メーカー、テスラ・モーターズ(TSLA)が注目を浴びています。
同社株は2013年1月からの7カ月でで約4倍に上昇し、時価総額は1兆6000億円(まだトヨタの10分の1以下)となりました。株価が注目されるだけでなく、約6万2000ドルの同社最新車「モデルS」の出来が非常によく、今年第1四半期だけで全米4900台の販売を記録。新型車の好調な販売により、今年第1四半期の同社最終純利益は創業以来初の黒字を計上しました。
従来、自動車産業は技術集約型の産業であり、関連する何千何万の企業がデトロイトのような特定の地域に集まって産業を構成していました。その理由のひとつには、自動車を構成する何万という部品の試作品づくりがあります。何度もやり直しながら、時間・コストのかかる試作品を作るとき、その設備を持った各工場が1カ所に集まっていたほうが便利だったからです。
しかし米国は3Dプリンター革命により、どこでも簡単に低コストで試作品が作れる時代を目指しています。このことで新興国に散らばった製造業が、米国内に回帰するともいわれています(シェールガスもこれを加速)。電気自動車は、自動車よりもiPhoneによりいっそう近くなり、製造拠点をデトロイトに置く必要もないようです。
Google創業者の2人も早くから同社に出資!
2003年設立のテスラ・モーターズは、そのような新時代の先頭を走る電気自動車メーカーです。ニュースで映されたデトロイトは大変無惨な姿でした。テスラの本社のあるカリフォルニア州パロアルト市は、年中太陽が輝き、富裕層の多い豊かな地域です。地元にはApple、Google、Yahoo、eBayのほか、すぐ近くにはFacebook社やスタンフォード大学もあります。スタンフォードの学生であったセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジの2人は在学中にGoogleを起業し、共同経営者となっています。そしてこの2人は早くからテスラ社に出資しています。テスラ社の会長イーロン・マスク氏も、スタンフォード大学大学院を中退して事業に専念した起業家でした。イーロン・マスク氏は1990年代よりシリコンバレーで大成功した起業家および投資家であり、今はeBayの1部門となったあのPayPal社を作り上げました。それだけでなく、米国の太陽光セクターで目覚しい上昇を遂げたソーラー・シティー社(SCTY)を起業した1人でもあり、会長にもなっています。
同氏もゼロから無限の可能性をアメリカンドリームに賭けた一人であり、南アフリカの移民として牧場や穀物倉庫の清掃員からスタートし、1990年代のある日に突然自ら作ったIT企業を売却して数百億円を手にしました。そしてまるでコンピューターを組み立てるように、シリコンバレーで自動車製造の会社を立ち上げました。
このことは昔であればとても無理だったでしょうが、時代がそれを後押ししているように思われます。また同氏が、新しいことが好きでお金持ちの多い地元シリコンバレーで顔の利く存在であったことも、テスラ社の資金集めに有利に働いたと思われます。同氏自身、自らの個人資産から70億円ほどをテスラ社に出資しています。
なぜ同社の電気自動車は売れるのか?次ページではその真相に迫ります>>>