雑貨/北欧・ヨーロッパ雑貨

アンティ・ヌルメスニエミについての小さな本(2ページ目)

モダンでありながらほのぼのとしたデザインのこのポット、どこかで見たことはありませんか?ひとつのポットから始まった好奇心が1冊の本になりました。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド

サンク・保里正人さんインタビュー

本の中身
ポットをいろんな角度で眺めてみる(本書より)
Q1.この本を作ろうと思ったきっかけは?

やはりあのコーヒーポットが好きだからです。実はこの本、「 アンティのイベントをやろう!」とビオトープの築地さんと盛 り上がっていた最初は、コーヒーポットの写真とアンティの簡 単なプロフィールの載ったイベント用パンフレットでした。し かし実際につくりはじめてみると、いろいろとわからないこと が多くて困ってしまいました。そんなときにヴォッコさんに会 えることになって、どんどん話が大きくなっていって、実際に 彼女に会ったら感動してしまい、ますます思い入れが強くなっ て、「ちゃんとした一冊にまとめて、たくさんの人に見てもら いたい!」ということになり、そして今の本が完成したのです 。だから、きっかけはコーヒーポットですが、ここまでのかた ちにすることができたのはヴォッコさんの魅力のおかげだと思 っています。

Q2.アンティ・ヌルメスニエミのポットの魅力とは? そして ご本人の魅力とは?

いわゆる北欧デザインと聞いて想像する、ファッショナブルで洗 練されたものにくらべ、アンティのつくるものは良い意味で少 しやぼったくて個性的だと思います。しかし、それらはユニー クで真面目にデザインされた実のある道具だから、使う人が気 負わずに長く付き合っていけるのではないでしょうか。そんな 彼のものづくりを代表する作品のひとつが、このコーヒーポッ トなんじゃないかと思っています。そして、そのデザイナーで あるアンティ・ヌルメスニエミの魅力も、このコーヒーポット にそのままあらわれている気がしています。

Q3.ヴォッコ夫人の印象、お家の印象はいかがでしたか?

ヴォッコさんは本当に魅力的な方でした。長い人生の中で起こ った様々な出来事に流されることなく、自分の信じるものをス トイックに守り続けてきた女性なんだと感じました。そして、 アンティの設計した彼女の暮らすご自宅は、インテリアのセン スやその広さも素晴らしかったのですが、ぼくがいちばん感動 したのはその環境です。ヘルシンキ中央駅から車で15分程な のに、建物の周りには信じられないくらい伸び伸びとした自然 があふれています。そしてその恵みを最大限に生活の中に取り 込むための空間デザイン、そこでその自然をいつくしみながら 暮らすヴォッコさんのライフスタイルに感動しました。

Q4.本をデザインした上でのこだわりなどはありますか?

亡くなってしまったアンティ・ヌルメスニエミに捧げるため、 彼のコーヒーポットそのままの大らかでモダンな装丁にしたい と考えました。また、自費出版だったので、いちグラフィック デザイナーとして普段の仕事ではなかなか形にできないアイデ アに挑戦したいとも思いました。たとえば、小口を黒く塗った り、文庫本サイズだけどハードカバーだったり、表紙の色バリ エーションを5種類つくったり、表紙に入る本の題名はフィン ランド語だったり・・・などです。

Q5.本が出来上がった感想は? 読者のみなさんへ一 言どうぞ。

今回は慣れない編集や執筆までを担当したので、制作は本当に 大変でした。だから、読者の方から良い感想を聞かせてもらえ ると本当にうれしいです。もちろん、自分ではとても気に入っ た一冊をつくることができました。この本がきっかけになって アンティやヴォッコ、フィンランドという国やデザインそのも のに興味がわいたりして、読んでくれた方の好奇心がどんどん 広がっていってくれるとうれしく思います。             

ビオトープ・築地雅人さんからのメッセージ

本を作って楽しかったことや大変だったことなどを教えてください。

実は自分はアンティよりもヴォッコさんを先に昔の雑誌で知って それ以来のファンでした。でヴォッコさんの旦那さんということでアンティを知りました。 なのではじめてお会いしたときの感動は忘れられません。
海外取材ということもあって、スケジュールが大変でした。聞きたいことが山ほど あり、スケジュールも決まっていたので、ヴォッコさんにとっては大変な2日間だったと 思います。いやな顔せず黙々と答えてくれたのは、デザイナーさんとしてのプロ意識 もあると思いますが、ヴォッコさんのやさしさでもあったようで、最後に質問事項がよかった (たぶんお世辞だと思いますが)、というねぎらいをかけてくれたときには、うれしくて 泣きそうになりました。その時に享子さん(サンク・オーナー)もうるうるときてたのも印象深かったです。
あと写真を撮ってもらった田辺わかなさんには、スケジュールを組んでいた日の 屋外の撮影が曇りでうまくいかず、帰国日の朝に無理して撮影してもらったら、 結果的にとてもいい写真ができました。(最後の鉄塔のシーンです。) 長い間かかったので、 出来上がった本を正人さんに見せてもらった時はすごく感動しました。

読者の方へメッセージをお願いします。

自分は2003年の12月にアンティにメールを出したことがありました。 アンティが11月に亡くなっていたと知ったのは、それから数ヶ月後でした。 直接お会いすることはできませんでしたが、奥さんのヴォッコさんを通じて アンティの人柄を知ることができ、一度もお会いしていないのに親しみ をもって彼の名前を”アンティ”と呼ぶようになりました。 この本を通じ、日本ではあまり知られていなかったアンティのパーソナリティや コーヒーポット以外にもいろいろとある作品を知ることで、アンティのことをもっと 知っていただければ幸いです。

保里さん、築地さん、どうもありがとうございました!

CINQ(サンク)
東京都渋谷区神宮前6-12-15 ハイネスト原宿5F
tel 03-5485-8850
open 12:00~20:00
http://www.cinq-design.com/

biotope(ビオトープ)
東京都世田谷区下馬5-16-1
tel 03-3414-9225
open 平日14:00~19:00 土日祝 12:00~19:00 水曜定休
http://www.biotope.biz/


本の中身
アンティ設計の自宅兼アトリエ(本書より)
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