研究者気分で恐竜と対面
さぁ、いよいよ常設展『恐竜の謎を探る』の中心部へ。空間が一気に広がって目の前に現れるのは、肩に乗ってくれそうな小さな始祖鳥から、天井を突き抜けそうな全長18メートルのアパトサウルスまで、さまざまな恐竜の骨格標本群です。照明が少し落とされ、ほの暗い展示室は実にスタイリッシュでかっこいい雰囲気。叫び声を上げているまさにその瞬間! という面持ちの恐竜も多く、迫力満点です。ちなみにこの展示室の中で最も貴重なものは、全長約5.9メートルのトリケラトプス。頭が大きいゆえ、発掘されても頭が無い状態や、頭しか無い状態の多いこの恐竜が、全身全て揃っている「全身骨格」の状態で発見されたのは、これまで世界でたった2例。その内の状態の良い方が、ここ国立科学博物館に展示されています。
ところでこの展示室にある標本の半分はレプリカではなく実物化石ということもあり、通いつめる研究者も多いそう。研究者であっても素朴な疑問から大発見につながることがあるので、訪れる一般の来館者にも沢山の疑問、多くの発見をしてほしいという思いから、展示室にはさまざまな工夫が施されています。
例えば恐竜の名前は小さく表示。これは名前を文字で見ただけで「見た気」になってしまわないよう、とにかく標本をじっくり見てもらうための工夫です。
そしてこの展示室では、恐竜たちを系統分類や時代ごとに展示していません。
たとえば、恐竜の中に展示されているダチョウの骨格標本を見ることで、「骨盤の股関節に穴が開いている」という恐竜だけに進化した特徴が、恐竜の子孫の鳥類にも受け継がれているのがわかります。また時代も分類も違うステゴサウルスとエウオプロケファルスを並べた展示では、2種の違いは実は背中の板状の骨の向きだけだ、ということなどが示されているのです。他にも、二足歩行と四足歩行の恐竜が並べて展示されその違いを観察できたり、自分で見て“発見する”、“驚く”そして“新たな疑問が湧いてくる”ような展示となっているのです。
さらに主な展示には第一線で活躍する恐竜学者が、その骨格や研究について自ら語るビデオがついています。まだまだ謎の多い恐竜の研究。まったく違う意見をもつ2人の学者を1つのビデオに出演させるなど、「自分はこちらの説かな」と学者目線で考えるキッカケも得られる映像です。
博物館まるごと恐竜の展示というわけではありませんが、恐竜の謎と向き合いたいならあっという間に数時間経ってしまう国立科学博物館の常設展。あなたの中にも世紀の大発見につながるキッカケが芽吹くかもしれません。
*記事の画像は1ページ目の1枚目のみ開館時と同じ照明で、それ以外の画像は撮影用に明るくした上で撮ったものです。
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■国立科学博物館
・住所:東京都台東区上野公園7-20
・TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
・入場料:常設展示 一般・大学生 600円/高校生(高等専門学校生含む)以下 無料
・営業時間:9:00 ~17:00 (入館は16:30 まで)
*特別展等の場合は延長することがあります。
*金曜日のみ9:00 ~20:00 (入館は19:30 まで)
・休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)
・年末年始(12月28日~1月1日)
・アクセス:JR『上野』駅公園口から徒歩5分
東京メトロ銀座線・日比谷線『上野』駅から徒歩10分
京成線『京成上野』駅から徒歩10分