インスリン注射

インスリン注射の青あざは、ちょっとした気配りで防げます

映画『ショコラ』でチョコレートが大好きな奔放な老女アルマンドを名女優ジュディ・デンチが演じました。老女が糖尿病を隠してチョコレート屋に入り浸っているのを見た娘が、老女のスカートをまくってインスリン注射跡の青あざを皆に見せるシーンがあります。

注射針が細小血管に当たると皮下に血豆ができたり内出血して青あざができたりします。血豆はインスリンの吸収に影響することがありますから、たびたびあるのならペン型注射針をより長い針先のものに換えて血管より深部に注入するようにするのがルールです。

青あざは数日で消えますし、大きな問題にもなりませんが、インスリン注射に適した部位はいささか妙なところなので、ベッドや浴場、プールなどであまり人に見られたくないものです。また、要注意の糖尿病患者であることを隠してバイアグラやシアリスなどのED薬をもらいに泌尿器科医を訪れても、腹部の青あざでバレバレになってしまいます。でも青あざは予防できますよ!

注射針を抜いた時にすぐ小さな血の粒が出てきたら細小血管を切った印ですから、少しの間、上から指でしっかりと押さえ付けて止血すれば内出血の拡散を防ぐことができます。血が止まりにくいワーファリンやアスピリンを服用している人は特に意識してください。

インスリン注射部位のローテーション

皮下脂肪にインスリンを注入しますから、脂肪がある場所ならどこにインスリンを注射しても問題になりません。しかし、どこにどのような頻度、タイミング、ローテーションで注射するのがいいか? となると多くの意見が入り乱れます。

理想的には常に一定した針の深さで、インスリンを吸収する細小血管の近くに注入するのがいいのです。深度は注射器の時代は慣れが必要でしたが、今は使い捨てのペン型注射針で好みの深度が選べますからとても容易になりました。経験則ですが、インスリンは深い所に注入する方が作用が早く始まるようです。深度がばらつくとインスリンの効果がばらつきますから具合が悪いのです。

一般に薦められているインスリン注射のスポット(部位)は、「へそ」を中心にした5cmの円の外の腹部です。「へそ」の近くにはインスリンの吸収を不規則にする硬い組織があるので避けるようにします。痛みがほとんどない腹部に注射されたインスリンは、最も速く、かつ最も安定したレートで吸収されます。上腕の背側部や大腿の上外側部がこれに続き、臀部のインスリン吸収が最も遅くなります。

ですから、高血糖を補整するインスリンは速く効く腹部に注射しますし、食事とインスリンで血糖値が乱高下しやすい人は、大腿部注射で変動を少なくするように吸収率のレートの違いを利用することもあります。

腹部はよく見えますし、両手も使えて理想的なのですが、1型糖尿病者は生涯にわたるインスリン注射で腹部に脂肪の塊ができたり、傷の跡が生ずる恐れがありますので、上腕や大腿部注射も好むようです。上腕や大腿部を常用する場合は、毎日なるべく同じような場所を同じような時間に注射するように勧められています。思いつきで場所を変えるとインスリンの効き方が変わってしまいますから。また、インスリンの吸収は血流量によっても影響を受けますから、大腿部や上腕に注射してからスポーツをすると予定外の血糖値になることがあります。やはり、スポーツや強い力仕事をした時は血糖測定が欠かせません。
インスリン注射部位

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インスリン注射部位


インスリン注射の同じ部位でのローテーション

無意識に漫然と同じような場所に繰り返してインスリン注射をしていると、だんだんそこの組織が固くなってインスリンの吸収が悪くなります。いや、それ以前にインスリンペンの注入ボタンが重くなったり、針を抜くとインスリンペンからインスリンが飛び出したりすることがあります。そのスポットを数カ月使わないと元に回復しますから、やはり同じ部位でのローテーションは必要です。

インスリンポンプではインスリンを注入するカニューレを3日くらいは挿入していますから、次の場所は少なくとも5cmは離すようにします。インスリンペンでは1回の注射で影響が及ぶ範囲を10円硬貨の大きさでイメージするといいでしょう。次の注射は指1本の間隔を空けます。

前の注射位置を覚えておくのは不可能ですから、腹部では上下左右に4等分して、日毎に「おへそ」に近づけたり離したりしながら分散するのがいいでしょう。無意識に注射すると皮下脂肪の厚い下腹部の同じような場所に集中してしまうものです。ログブックにその曜日の位置を記しておくのも一案です。

インスリンポンプでは、「おへそ」の部分を抜いて二重の同心円のサークルをイメージして時計の文字盤のように移動させたり、水平に左から右へと動かしながら上下していくイメージ、あるいはジグザグ模様、上下左右に交互に位置替えするなど、一人ひとりに合ったパターンを考案するといいでしょう。

今のような特長のあるインスリンが無かった時代では、1型糖尿病の友人はきちんと食べる朝食では腹部、昼と夕は上腕と大腿部、早く眠りたいベッドタイムはNPH(中間型)をゆっくりと効かすために臀部にうっていたと話していました。糖尿病治療は患者自身の創意工夫がないとなかなかうまくいかないものです。
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