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自動車よりもコンパクトな超小型モビリティーの可能性(3ページ目)

国土交通省によると、超小型モビリティーとは、「自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人~2人乗り程度の車両」と定義づけされています。各メーカーが超小型モビリティーの発表を行なっていますが、この章では、私が注目をしている日産の「ニューモビリティーコンセプト(New Mobility Concept)」についてお話しできればと思います。

中島 徳至

執筆者:中島 徳至

電気自動車ガイド


小型モビリティー普及に向けた実証実験

日産は小型モビリティーの本格普及のために、いたるところで実証実験を行っています。

日産のプレスリリース情報によると、2011年度には国土交通省の協力のもと、横浜市、青森県、福岡県などと地域交通システムのあり方の検証や調査のために走行実証実験を行いました。2012年7月からは、神奈川県警察にて、青色防犯パトロール用車両として活用されました。また2013年2月には、横浜市と東京急行電鉄株式会社が、快適かつゼロエミッション社会をめざして民間企業などと設置した「スマートコミュニティ推進部会」のもと、たまプラーザ駅北側などの東急田園都市線エリアで、子育て層を対象にした「NISSAN New Mobility Concept」を活用したモニター調査を実施しました。また同年7月からは、私も参加しました豊島での小型モビリティー導入促進事業における実証実験も行っています。

日産は実証実験を通じて、今後も様々な電気自動車の使用例やスムーズな交通の流れ構築の実現、そして次世代のエコで快適なまちづくり検討に向けての提案を行っていくとしています。

香川県 豊島における日産超小型モビリティー実証実験

(図)豊島における日産超小型モビリティー実証実験

(写真)豊島における日産超小型モビリティー実証実験

2013年7月より、土庄町、ソフトバンクモバイル、ベネッセホールディングス、そして電気自動車普及協議会は、「豊島モビリティ協議会」を設立し、土庄町の豊島で、超小型モビリティーを活用した実証実験を実施しています。この実験は、先ほどお話しした国土交通省の「超小型モビリティーの導入促進事業」の支援案件として、
  • 移動手段の充実から、観光場所として豊島の付加価値向上と活性化を図る
  • 低炭素・省エネルギーで環境に負荷をかけない循環型社会の実現
  •  
を目的としたものです。

具体的な内容としては、2013年7月20日から2014年3月31日まで、来島する観光客の島内の交通手段として超小型モビリティーをレンタルして使用してもらい、充電設備の提供も行うといったものです。

超小型モビリティー試乗の感想

先日、実証実験の開始日に香川県の豊島で、日産ニューモビリティーコンセプトやユビ電の実証実験が始まると知り早速試乗を行ってきました。そのとき感じたことやこれからの動向予測についてお話しします。ルノーが設計を担当していることもあり超小型モビリティーが普及している欧州のテイストを離島で楽しむことができると期待して試乗しました。

実際乗ってみて感じたことは、まず運転席、後部席共に人間工学に基づいたシート設計がされており、後に知ることになるこの車の完成度の高さを期待させてくれました。

アクセルを踏むと電気自動車らしく胸のすくような滑らかな加速と、それに伴いキーンというモーター音、急な坂道も何のストレスもなく駆け上がる力強いトルク感、そして下り坂では回生ブレーキシステムが作動し、緩やかな減速がドライバーに安心感を与えてくれ、スポーツカーに搭載されている四輪ディスクブレーキから時折聞こえる独特のブレーキサウンドが本気度を感じさせました。

また、島独特のワインディングロードでは、程よい遊びの効いたステアリングがドライバーに安心感を与え、剛性感の高いフレームとサスペンションがロールを抑え、安心したドライビングを楽しませてくれました。最小回転半径も3.4mと小回りが効き、剛性感の高いフレームとサスペンションがロールを抑え、安心したドライビングを楽しむことができました。

ただし一方では、開発にしっかり時間をかけないと出てくる現象として、ブレーキの踏みしろが少なく、まるでレーシングカーのような浅い踏みしろになっていることで、ブレーキングの不安感をドライバーに感じさせてしまうことや、登坂路において完全停止しているにもかかわらず、ブレーキを離すと後ろに下がってしまう点なども、リーフではクリアできているVCU制御技術を持っていながら実現できていなかった点として残念でした。

しかし総合的に、私が知る限りの超小型モビリティーの中でのシャシやボティなどの自動車性能の完成度は高く、パワーコントロールユニットと呼ばれる電気自動車の、中枢部分の改善点は順次変更されていくのではないかと感じました。

(図)日産undefinedニューモビリティーコンセプト ユビ電システムによる充電

(写真)日産 ニューモビリティーコンセプト ユビ電システムによる充電

充電については、ソフトバンクモバイル社が実証実験として提供しているユビ電システムが島の代表的なところに設置されていました。充電の際にコンセントから得られる情報を、ドライバーの充電情報や充電金額など携帯で確認する事もできる画期的なシステムで、このようなゾーンで普及する車両充電の相性は抜群であると感じました。

超小型モビリティのこれから

トヨタ車体が発売しているコムスが1人乗りで、70万円前後の価格で販売されており、次世代自動車普及センターの補助金が7万円です。この車両の価格が同水準であればかなりの台数が売れるのではないかと予感しました。私自身が10年前、超小型モビリティーの先駆けとして、量産化を行う目的で国土交通大臣認定の自動車メーカーを作り、車両規格を一から行った時から、このような超小型モビリティーが普及する時代を夢見ていました。当時は二人乗りが一切認められず、大変悔しい思いをしましたが、今では二人乗りが認められ世界各国で普及が期待されています。日本においては、市場シェアを奪い合うバイクメーカーや軽自動車メーカーの動向が気になるところではありますが、このNISSAN New Mobility CONCEPTは公道走行を可能とするための大臣認定を国土交通省から取得しました。

私の持論である電気自動車の普及モデルをライン展開とゾーン展開に分けると超小型モビリティーこそ限られたゾーン展開を行いながら普及して行くものであり、日産自動車は同車を活用し、「ITサポートを通じ公共交通機関とEVを結びつけることによる効率的で利便性の高い公共交通サービス「シームレス モビリティサービス」として朝晩は個人の通勤用車両として、昼間は社用車として利用する。「2モードEVカーシェアリング」などのサービスや、市街地や観光地での回遊性向上による地域活性化への寄与などの検討を行っていく予定で、これからのスマートシティーになくてはならないゾーン展開の名脇役としての役割を果たしていくと期待しています。
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