大画面のすみずみまで、どこまでもフラット
アンドレアス・グルスキーが写真で表す壮大で緻密な世界
アンドレアス・グルスキー「カミオカンデ」(2007年、タイプC プリント、228・2×367・2×6・2センチ)(C)ANDREAS GURSKY / JASPAR,2013
Courtesy SPRUTH MAGERS BERLIN LONDON
金色の球体に覆われた不思議な空間。画面の隅に2艘浮かんだ小さなボートから、この空間がとてつもなく大きな広さを持つ場であることがわかります。この作品のタイトルは『カミオカンデ』。岐阜県飛騨市の地下1000mの場所にあるニュートリノ検出装置、スーパーカミオカンデで撮影された写真です。
この写真を撮影したのはドイツ人の写真家、アンドレアス・グルスキー。群衆や巨大な人工物、建造物などを独自の視点で切り取る、現代で最も人気のある写真家のひとり。彼の展覧会が現在、国立新美術館で開催されています(大阪に2014年に巡回予定)。
展覧会では、この作品を横幅367センチという巨大なスケールで細部までじっくり眺めることができます。
アンドレアス・グルスキー「ピョンヤン [1]」(2007年、C-プリント、307×215・5×6・2センチ)(C)ANDREAS GURSKY / JASPAR,2013 Courtesy SPRUTH MAGERS BERLIN LONDON
アンドレアス・グルスキーとはどんな人?
1955年旧東ドイツ生まれの彼は、ドイツ現代写真を代表する写真家。彼の師匠であるベッヒャー夫妻は、給水塔や溶鉱炉などの近代産業が創りだした構造物を、同じような構図、同じような色合い、同じようなテンションで撮り続け、世界的な評価を受けている写真家。夫妻の薫陶を受けた写真家は「ベッヒャー派」と呼ばれていて、彼もそのひとりです。『ピョンヤン[I]』や、F1のコース、高層ビルやアルプスの山など、世界のさまざまなものを被写体として切り取る彼の作品は世界的に高い評価を受けており、2011年には彼の美術オークションで写真としては世界最高額(433万ドル!)で落札され、大きなニュースになりました。
※なので、グルスキーの写真が気に入った方は、グルスキーのほかに、「ベッヒャー」や「ベッヒャー派」で検索してみると、お気に入りの写真に出会えるかもしれません。
現在開催されているアンドレアス・グルスキー展は、日本における彼の初めての個展。初期作品から最新作まで代表作を、作家自身のセレクションにより展示されています。また、展示順やプリントの大きさなどなど展覧会の細部に到るまで、彼の構成によるものだそう。つまり、展覧会全体がグルスキーの作品なのです。
展覧会場で驚くのが、作品のスケール。『カミオカンデ』をはじめ、巨大にプリントされた代表作が鑑賞者を圧倒します。インターネットの画面からもその壮大なスケールを感じ取れますが、プリントされた作品を見ると大きすぎて、なおかつ緻密すぎて、間近で見ると全体像がつかめないほどです。
見る人はまず遠くから全体像を眺め、続いて近づいて細部をじっくり鑑賞し、ふたたび後ずさりして画面を眺めるといった形で、1枚の作品を堪能するのにけっこうな時間がかかります。そこがまた楽しい!
アンドレアス・グルスキー「99セント」(1999年、タイプCプリント、207×325×6.2センチ)(C)ANDREAS GURSKY / JASPAR,2013
Courtesy SPRUTH MAGERS BERLIN LONDON
『99セント』もまた、横幅325センチもの巨大なプリント。舞台はアメリカのディスカウントショップ。画面のすみずみまでピントが合っており、遠くの物も近くのものもくっきりと、はっきりと見ることができます。
その一方で、かわいらしく小さくプリントされた作品も展示されています。今回の展覧会は、グルスキー自身がプリントの大きさを決めているので、「どうしてこの作品は、この大きさなのだろう?」と、考えながら鑑賞するのも一興です。
今回の展覧会は、国立新美術館での東京展ののち、2014年2月から大阪の国立国際美術館へ巡回の予定。東日本の方のみならず、西日本の方もぜひご覧ください。オススメです!
アンドレアス・グルスキー展
■東京展会場:国立新美術館 企画展示室 1E
会期:2013年7月3日(水)~9月16日(月・祝)
開館時間:10:00~18:00 金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日:火曜日
■大阪展(予定)
会場:国立国際美術館
会期:2014年2月1日(土)~5月11日(日)
特設サイト:http://gursky.jp
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