成年後見制度を必要とするケース
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などで判断能力が低下している人(本人)が不利益を被らないよう、本人の財産の管理や遺産分割協議などの法律行為を助ける人(成年後見人等)を家庭裁判所に選任してもらう制度です。相続において成年後見制度を必要とするケースは、「相続人の間の遺産分割」「相続人への名義変更等」のためという理由がほとんどで、親族等が家庭裁判所に申し立て、成年後見人等(本人の判断能力の程度やその他の事情によって、成年後見人・保佐人・補助人の3つに分けられます。以下、成年後見人が選任されたものとします)が選ばれます。なお保護・支援の必要度合いに応じて、親族以外にも、弁護士等の専門家が選ばれることがあります。
「成年後見制度」を早めに利用したいケースとは
成年後見人等が選任されるまでには考えていた以上に時間がかかる
ある相談者から、「入院中の父はあと半年位で亡くなりそうで、母は認知症。相続税の支払い(相続発生から10カ月)のため、相続が発生したら早く遺産分割協議を済ませて名義変更、不動産の売却などを進めなければならない」という相談を受けました。
そこでアドバイスしたのが、限られた期間で円滑に手続きを進めるため、お父様の生前から、お母様の成年後見人の選任をしておくとよいということでした。結果、その後に相続が発生、遺産分割などを早々に済ませ、余裕をもって不動産を売却できたため、売り急がず高く売却できたとのことです。
ただし、ここで注意点があります。相続人間の遺産分割は利益相反になります。したがって、相続人である母(認知症)の成年後見人が長男であるなど、他の相続人が成年後見人になっている場合には特別代理人の選任が必要になり、この申し立て手続きに通常よりもさらに1カ月程度を要することになります。相続が発生してから成年後見人と特別代理人の選任の申し立てでは、選任後の相続手続きにかけられる時間がさらに限られてしまいます。
被相続人になる人こそ「成年後見制度」を利用した方がよいことも。詳しくは次ページ>>>