チロル地方発祥のオーストリア料理
ケーゼ・シュペッツレ
チロルの山岳地帯における代表的な料理、ケーゼシュペッツレ
インスブルックを州都とする、チロルの山岳地方でよく食されるのがこちら、ケーゼ・シュペッツレ。ケーゼとはドイツ語で「チーズ」の意で、シュペッツレとは小麦粉と卵の生地を練って、塩茹でしたパスタの一種。このシュペッツレと、細かくすりおろしたエメンターラー・チーズを交互にレイヤー状に重ねたものに、カリカリに揚げた玉ねぎやネギなどをトッピングして、サーブされるのが一般的です。またシュペッツレ料理のバリエーションとしては、生地にホウレンソウを練りこんだ「シュピナート・シュペッツレ」、レンズ豆のピュレとからめた「レンズ豆とシュペッツレ」、リンゴのコンポートおよびシナモンと和えた甘い「アプフェル・シュペッツレ」などがあり、メインディッシュとして食されるほか、重めの肉料理などの付け合わせとして出されたりもします。
このケーゼ・シュペッツレやシュピナート・シュペッツレをはじめとするシュペッツレ料理は、アルプスに近いチロル州やフォアアールベルク州の街中やスキー場付近のレストラン、またその他の都市でもお祭りの屋台などでよく見られます。ただ、ウィーンやその他の街では、どこのレストランでも扱っているわけではないのでご注意を。
聖マルティンの日に食べる、ガチョウ料理
毎年11月にしか食べられない、貴重なガチョウ料理
もうひとつ、オーストリア料理を語る上で忘れてはならないのがこちらのガチョウ料理。ドイツ語ではマルティーニ・ガンズル(聖マルティンのガチョウ)と呼ばれ、オーストリアでは毎年、彼が昇天した11月11日の「聖マルティンの日」に食べる習慣があります。この聖マルティンとは4世紀に生きた元ローマ兵で、後に司教になった人物。彼に関しては様々な逸話が残されていますが、もっとも有名なものは、マルティンが司教に推された際に、それを固辞した彼がガチョウ小屋に隠れたというもの。そして司教就任の祝宴ではガチョウ料理が振る舞われたことから、彼の命日にガチョウ料理を食べる習慣ができたのだとか。
ガチョウ料理の定番サイドディッシュ、紫キャベツのサラダ
ガチョウ料理の定番としては、写真のように、脂の乗ったガチョウを皮がカリカリになるまでグリルしたものに、肉汁を絡めたジャガイモのお団子と紫キャベツのサラダ。この他にも、こだわりのあるレストランなどでは、
- ガチョウ胸肉の燻製カルパッチョ
- ガチョウのレバー団子
- ガチョウのクリームスープ
- ガチョウ鍋
- ガチョウのパスタ
などの一味違ったメニューが展開されていることも。
いずれにせよガチョウ料理は、オーストリアで11月にしか食べられない貴重な料理ですので、晩秋に旅行される方にはぜひお勧めしたいオーストリア料理のひとつ。「聖マルティンの日」(11月11日)前後になると、どこのレストランや居酒屋も、エントランス付近の黒板に、特別メニューとして"Gansl"(ガチョウ)と書いて掲げるので、それを目安にすると良いでしょう。