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化学的流産? 多くの人に起きうる生化学的妊娠とは

最近、生化学的妊娠(化学的流産)と診断される方が増えてきています。さて、「生化学的妊娠」とは何でしょう。日本産科婦人科学会の定義では、流産には含めないことになっています。だれにでも起きる可能性があります。生化学的妊娠について解説します。

藤東 淳也

執筆者:藤東 淳也

産婦人科医 / 子宮の病気ガイド

生化学的妊娠とは(化学的流産とは)

生化学的妊娠とは

生化学的妊娠はだれにでも起きる可能性があるもので、流産とは考えなくてよいものです

生化学的妊娠とは、妊娠反応が陽性となった後、超音波で子宮内に赤ちゃんの入る袋が確認される前に流産してしまうことです。

一般的に「化学的流産」と言われることもありますが、医学的には「生化学的妊娠」が正しい言い方です。

最近の妊娠検査薬の感度が高くなったことで診断されることが増えていますが、症状はほとんど無く、後遺症の心配もありません。日本産科婦人科学会の定義では流産回数には含めないことになっており、流産とは考えなくてよいものです。
 

妊娠検査薬で陽性反応が出る生化学的妊娠

妊娠は、子宮の中に受精卵が着床することでスタートします。着床した受精卵は、これから胎盤となっていく絨毛という組織をつくります。そして、この絨毛から、hCGというホルモンが分泌されます。妊娠前の女性の体にはhCGは存在しないので、hCGが検出されれば、間違いなく受精卵が子宮に着床していることになります。この時点から、超音波で子宮内に赤ちゃんの入る袋が確認されるまでの期間が生化学的妊娠となるのですが、hCGの測定感度が上がったことで「生化学的妊娠」と診断されることが多くなりました。

また、不妊治療で黄体補充療法としてhCGの注射を行う場合がありますが、注射の影響が残っていて生化学的妊娠と誤ることがありますので注意が必要です。
 

生化学的妊娠はだれにでも起きる可能性があります

生化学的妊娠は、何の異常もない若い健康なカップルでも、30~40%と高率に起こっていることが判っています。多くの人が気付かないうちに経験しているもので、「少し遅れて、いつもとちょっと違う生理が来た」、「いつもより重い生理が来た」と思っている女性の中に、かなりの数が含まれていると考えられます。

また、最近は分娩施設が少なくなっていることもあり、妊娠のことを頭においている方は、生理が遅れるとすぐに妊娠検査を行い、早い段階で産婦人科を受診される傾向にあります。このため、生化学的妊娠と診断されることも多くなってきています。
 

生化学的妊娠と診断されたら

生化学的妊娠の場合、月経とほぼ同様の出血の後、妊娠反応は消えてしまします。妊娠反応が消えれば治療は不要ですし、検査を受ける必要もありません。すぐに次回妊娠を考えることもできます。ただし、妊娠反応陽性が続く場合は、子宮外妊娠の可能性がありますので、精密検査を行い治療が必要となります。

生化学的妊娠を経験された方の中には、「せっかく宿った命をなくしてしまった」、「自分に問題があるのではないか」、「今後の妊娠が心配だ」と悩まれる方がいらっしゃいますが、だれにでも起きる可能性がある不運、自然淘汰であり、誰のせいでもありません。落胆する気持はよくわかりますが、生化学的妊娠はあくまでも妊娠成立前の出来事なのです。逆に考えれば、妊娠に一歩近づけたということになります。

人間の受精卵は、受精直後では約40%が異常卵だといわれています。それが子宮に移動する間に自然淘汰され、子宮に着床するのは約25%に減ります。残念ながら、生化学的妊娠を含めて初期流産の大部分は、防ぐことも止めることもできません。これはもともと受精卵に異常があった場合がほとんどで、繰り返しになりますが、誰にでも起きる不運、自然淘汰なのです。生化学的妊娠を繰り返す場合は不妊症に含まれるのではないかという意見もありますが、現在のところ明確な見解はなく、今後の検討課題となっています。
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