倒産物件は破産管財人が処分する
債務超過に陥って事業活動を停止した倒産会社でも、倒産時に所有物件(倒産物件)が全くないということは通常ありません。在庫商品、社用車、什器備品類、本社・工場などが多かれ少なかれ残っていますし、反対に、キレイサッパリ何も残っていないようなケースでは、倒産直前に会社財産の隠匿や不適切な処分がなされた疑いすらあります。このようなことから会社が倒産を申し立てた場合には、通常、裁判所から破産管財人が後日選任されます。選任される破産管財人は、倒産を申し立てた会社とも、倒産会社の債権者とも利害関係のない中立な立場の弁護士です。
破産管財人の業務は、倒産会社の全財産を調べたうえで換金し、最終的に債権者へ配当することなので、倒産時に残っていた倒産会社の所有物件は、破産管財人が何らかの形で最終処分をしなければならないのです。
一般消費者が倒産物件を購入することも可能
倒産物件をどのように処分するのがよいかは、残っている物件の種類や倒産時の状況によって異なりますが、一般的には処分が遅れることによる保管コストの増加、商品の陳腐化等による値崩れの可能性や盗難、紛失リスクを考えて、早めに換金するのが基本です。在庫商品については、倒産会社の店舗等を利用して、一般消費者へ小売りをするケースもないわけではありませんが、売れ残りが一定数生じることや、売却後の返品、交換要求やクレーム対応を敬遠して、倒産物件を取り扱っている専門業者へ一括売却されることが多いです。
これに対して、不動産については、金融機関の担保権が設定されていることがほとんどのため、破産管財人の一存だけで処分方法を決められず、担保権者と協議をすることになります。
担保権者としては、会社の倒産によって返済が遅滞しているのですから、直ちに担保物件の競売を申し立てることも本来できますが、次のようなデメリットがあるため、破産管財人から処分についての協力要請があれば、通常、これに応じています。
- 競売の申立費用がかかる
- 競売で落札されまでに一定の時間がかかる
- 運良く1回目で落札された場合でも、一般的な売買価格と比較して落札額(回収額)が下回る
破産管財人は、担保権者の協力が得られる場合には、不動産仲介業者に買主の募集(仲介)を依頼して、より良い条件の買主を見つけて売却を行い、その売却代金の中から担保権者へ相当額を支払って、債権者への配当を増やす努力をするのです。このように担保権者の任意の協力を得て、担保となっている物件を売却することを「任意売却」または「任意処分」と呼んでいます。
競売に入札する場合と違って、任意売却の場合には不動産仲介業者が間に入って重要事項の説明を買主にしてくれますし、物件所有者からも建物建築図面等の資料を比較的スムーズに引き継げられるので、一般消費者の方も比較的安心して倒産物件を購入しやすいと言えます。
次のページでは、倒産物件を任意売却で購入する際の留意点について解説します。