3.資金ショートの危険がないか
申立前の債務については弁済禁止の保全処分を得られる
つまり、裁判所から買掛金、借入金等の債務の支払いを暫定的にしなくてもよいというお墨付きを得られるため、民事再生手続きを申し立てた会社(再生会社)は、自社で振り出した手形や小切手を決済できなくても、不渡による銀行取引停止処分を受けずに済むのです。
このように民事再生手続きを申し立てると、暫定的に大半の債務の支払いを棚上げできるため、資金繰りが楽になる側面はあるのですが、棚上げできるのはあくまで過去の債務にすぎません。
今後の取引から発生する買掛金等については棚上げすることはできませんし、取引先によっては現金決済を求める等、今までよりも取引条件を厳しくしてくることもあります。また、税金や社会保険料等は弁済禁止の保全処分の対象外のため、支払いを棚上げできませんから、多額の滞納がある場合には要注意です。
これに加えて、負債額や各地の裁判所で異なるものの、民事再生手続きを申し立てる際の裁判所へ納める予納金や依頼する弁護士費用等で通常500万円程度の出費も覚悟しなければなりません。
民事再生手続きの申立直後に資金ショートをおこすことがないよう、資金的余力が多少あるうちに申立てを決断しなければなりません。
4.大口債権者や担保権者の同意を得られるか
民事再生手続きにおいて裁判所から再生計画を認可してもらうためには、次の2つの要件をいずれもクリアしなければなりません。- 債権者集会等で議決権を行使した議決権者の過半数の同意
- 議決権者の議決権の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意
ゴルフ場の破綻のように多数の消費者が債権者となるような事案では、1の頭数を満たす債権者の賛同を得るのも一苦労しますが、債権者が少ない事案で通常問題となるのは2の金額要件をクリアできるどうかです。
つまりは、メインバンク等の大口債権者の同意が得られるかどうかが最大のポイントです。
また、メインバンク等の大口債権者は、再生会社が所有する不動産等の重要な資産に担保権を設定していることが通例です。民事再生手続きでは、大口債権者が、この担保権を実行することを基本的に制約していないため、事業を継続するうえで不可欠な会社資産(例えば、工場など)に担保が設定されている場合には、担保物件に相当する価額を債権者と協議し、その金額を支払うことで担保権の実行を回避しなければなりません。
このように民事再生手続きを成功させるためには、大口債権者や担保権者の意向を無視することはできないのです。
5.再生手続きに精通した弁護士に依頼しているか
民事再生は、通常、手続きを申し立ててから再生計画の認可決定まで半年程度のスケジュールで進む短期決戦です。この短期間のうちに、経営の合理化を進めて収益を改善したり、メインバンクや取引先等との折衝をしたり、場合によってはスポンサーの選定もしなければなりません。
そのため、民事再生手続きの経験の乏しい弁護士や、裁判その他の業務で忙しくフットワークの悪い弁護士に依頼をすることはおすすめできません。
また、再生計画を作成するうえでよく問題となるのが、債権カットに伴って発生する債務免除益対策(タックスプランニング)ですから、法律の専門家である弁護士だけでなく、税務面でも民事再生を理解している税理士や公認会計士の協力を仰ぐべきです。
民事再生は企業にとって事業を存続できるかどうかの一大決戦ですから、依頼する専門家はくれぐれも慎重に決めましょう。