民事再生手続きによる企業再建の現実
再建には強いリーダーシップが必要
帝国データバンクが2011年7月25日に発表した「民事再生法申請企業の動向調査」によれば、民事再生法施行後の11年間で民事再生手続きを申請した企業(負債1000万円以上)は累計で8235件ですが、そのうち少なくとも1836件(22.3%)は手続き中に事業継続を断念しているとのレポートがなされています。
民事再生手続きを申請しても短期間のうちに事業継続ができなくなっては、折角支援をしてくれた関係者を再び裏切ることになります。民事再生手続きを成功させ、真に企業再建を果たすために重要な5つのポイントを理解しておきましょう。
1.経営者がリーダーシップを発揮できるか
経営不振に陥っている企業を再生、再建するためには、経営者の強いリーダーシップが必要です。再建型のスキームのうちで、民事再生手続きを選択するメリットとして、旧経営陣がそのまま留任できることがしばしば挙げられますが、あくまで「法的には留任が可能」という意味にすぎません。
経営不振に陥った原因にもよりけりですが、旧経営陣がそっくりそのまま留任して、金融機関、主要取引先、従業員等の関係者の理解と協力が得られるのかどうか慎重に見極めるべきです。
中小企業では後継者が見当たらないということもありがちですが、スポンサーのいない自主再建(収益弁済)型の場合には、再生計画が無事認可されたとしても、それ以降に10年の長期に及ぶ返済が通常待ち受けています。この返済を全て終えて初めて、企業として真の再生ができたことになるはずです。
現経営陣にそこまでのリーダーシップを求めることができないようであれば、民事再生のタイミングで経営陣が交代したり、社内に後継者がいないのであれば事業譲渡型の再生計画も視野に入れた方が良いでしょう。
2.本業に収益力はあるか
民事再生手続きでは、最低限、清算価値を上回る返済(破産した場合の予想配当額よりも高い返済)が求められます。そのため、自主再建を目指す場合には、コアとなる事業(本業)に収益性がなければ再生はおぼつきません。自主再建の場合に返済原資の中心となるのは「今後の余剰資金」ですから、基本的には本業の営業損益ベースで黒字になっているのか、または直ぐに黒字化できる見込みがあるのかが重要です。
民事再生手続きの申立に伴う顧客離れも多かれ少なかれありますので、売上の減少も一定程度見込んでおく必要があります。なお、減価償却費については現実のキャッシュアウトがないため、その分は加算して考えてもよいのですが、将来の設備投資分は見込んでおくことが必要です。
経営不振の原因が投資の失敗等の本業以外の原因であったり、不採算部門からの撤退やリストラ等の合理化で早期に収益を改善できる場合には再建できる可能性は一般的に高いと言えますが、同業他社との競争が激しく、構造的な不況業種の場合には再建の道のりは平坦ではありません。