10年ぶりの快挙に地元メディアも絶賛
「引退はつねに考えている」という黒田。1試合、1試合に全力を尽くすことを心に決めた
ヤンキースの黒田博樹投手(38)が4月14日(日本時間15日)、オリオールズ戦に先発し、5安打完封、しかも無四球5三振で2勝目(1敗)を挙げた。
「そんなに状態はよくなかったが、何とか投げられた。スライダーを見せ球に、ツーシームで攻めた。1人で投げ切れてよかった。粘っていくしかないと思っていた」
今季初戦でライナーを取りにいって痛めた右手中指は、まだ万全ではないが、それだからこそ丁寧に、テンポ良く投げたことが効を奏した。
今季、ヤ軍の完封一番乗りだが、黒田にとってはメジャー5度目のシャットアウトで、3度目の無四球だ。ヤ軍の投手が本拠地で9回無四球完封を飾ったのは、デービッド・ウェルズが2003年4月のツインズ戦で記録して以来10年ぶりの快挙のため、地元メディアも絶賛。「巧妙な投球でヤンキースタジアムの内野にゴロの山を築かせた」と球団公式サイトが報じれば、ニューヨーク・デイリーニューズ紙は、博樹のヒロとヒーローを引っ掛けて「SuperHiro」(スーパーヒロ)の見出しで紹介し、「もしヤンキースの投手が黒田のような投球を今後できるなら、ケガを抱えるスター選手たちは、すぐには必要ないだろう」と褒め称えた。また、ニューヨーク・タイムズ紙も「黒田がオ軍を征服した」と賛辞を送った。
今年の黒田のやる気が違う。ヤ軍は今季、緊縮財政をとり、ベテランが増えようが、ケガ人が出ようが、補強を行わなかった。近年、こんなに動かなかったことはなく、そのため、ヤ軍の優勝を予想した地元記者はほとんどいないという異常事態になっている。こういう状況下なだけに、「エース」黒田は今まで以上にチームを引っ張らなければならなくなっている。
また、昨年末、同級生だった松井秀喜氏が現役引退を表明した。「引退はつねに考えている」という黒田は寂しさを隠し切れないが、それだからこそ1試合、1試合に全力を尽くすことを心に決めた。
この2勝目でメジャー通算59勝58敗と、白星が先行した。「先はまだまだ長い」と気持ちを引き締めた38歳は、集大成のシーズンを突き進む。