かわいいタッチにも理由があります
アンリ・ルソー 《パリ近郊の眺め バニュー村》 1909年
先に挙げたモネ《積みわら》の風景より、かわいいですね。同じ時代の作品ですが、タッチ(筆の運びや絵具の載せ方)が全然違います。
柳沢学芸課長
「ルソーは、普段は税関で働きながら絵を描いていた、アマチュア画家です。
こうした趣味で描かれた絵が、新しい表現を求めた、同時代の前衛的で新しい表現を求める作家たちに大きなインパクトを与えました。
テクニックや学歴に頼ることがない日曜画家ルソーだからこそ、素朴だし、玄人にはできない表現の可能性を見せてくれたのです」。
確かに、リアルに描くこともかわいらしく描くことも、カラフルに描くこともぼんやり描くことも、どれも「表現」です。ルソーのかわいいタッチに評価が与えられているのも、それなりの理由があるんですね。
では現代の作品はどうでしょう?
大原美術館では、2013年4月20日から7月7日まで「Ohara Contemporary」という展覧会が開催されています。上記3点や近代の美術作品だけでなく、大原美術館ゆかりの現代美術アーティストの作品を見られる大規模な展覧会です。
三瀬夏之介 《ぼくの神様》 2007年
「この作品は、僕が大学3年のとき起こった阪神淡路大震災とオウムの事件が時を経てもなお影響を与えていると思います。
画面の大きさは、大きさ、構図や色の配置などすべて僕が制御できないものに挑戦したらこうなりました」。と三瀬さんは語ります。
柳沢学芸課長
「三瀬さんの作品に登場する多様な情報は、情報が多い現代社会を象徴しているのかもしれません」。
特に現代美術は、同時代だからこそ分かり合える、という楽しみ方もあるのですね。表現された作品の表面だけで「キレイ」と見るだけでなく、「なぜその作品がつくられたのか?」を、つくられた「時代」で知ること。美術作品に時代性が関係していることはお分かりいただけたかと思います。
【展覧会情報】
「Ohara Contemporary」
2013年4月20日~7月7日
大原美術館 (岡山県倉敷市)
http://www.ohara.or.jp/
これからオススメの展覧会
今回ご紹介した大原美術館「Ohara Contemporary」は、大原美術館のコレクションで構成された展覧会です。「コレクション」とは、美術館や企業が集めた作品のこと。今月は、こうした「コレクション」を見ることができる展覧会を、2つご紹介します。
日本画 竹内栖鳳 《アレタ立に》 1909(明治42)年 絹本着彩
大手百貨店の高島屋が、ときには販売する商品のために、あるいはウィンドウディスプレイや包装紙デザインの原画として、100年以上の歴史とともにコレクションしてきた絵画や写真などを展示。
4月20日(土)~6月23日(日)
世田谷美術館 (東京都世田谷区)
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html
※「高島屋」の「高」は「はしごだか」です
「ワンダフル・マイ・アート -高橋コレクションの作家たち-」
鴻池朋子 《幾つもの森を抜け やがて地上を照らしだす》 2006 ミクストメディア 130×270×85cm 高橋コレクション photo by Keizo Kioku (c)KONOIKE Tomoko Courtersy of the artist and Mizuma art gallery
日本有数の現代美術コレクターとして知られる、精神科医・高橋龍太郎氏のコレクション展。2000点にもおよぶコレクションの中から、19名のアーティストの作品が並ぶ。
2013年4月14日(日)~9月16日(月・祝)
河口湖美術館(山梨県南都留郡富士河口湖町河口3170)
http://kgmuse.com/exhibition/kaisaichu/wonderful/index.html