「A列車で行こう」の車窓から
熊本を出ると、九州新幹線の高架橋に沿って鹿児島本線を南下、10分後に宇土に停車すると、大きく右へ曲がって、単線非電化の三角線に入る。あとは、終点三角までノンストップ。ほぼ西に向かって進む。住吉を通過してしばらくすると、右手に有明海(島原湾)が見えてくる。晴れていれば、海の向こうに雲仙普賢岳が望める。有明海は遠浅の海として知られ、干満差が激しい。海苔養殖の竿の列、干潮時に干潟で使われる道路が満潮時には海中に没し、電柱のみが海に並ぶ不思議な光景は、長部田海床路 (ながべたかいしょうろ)として知られる。さらに進むと、「日本の渚百選」にも選定された御輿来(おこしき)海岸と、三角線の海岸の車窓は飽きることがない。
指定されたシートに座って窓から眺めるのもいいけれど、ソファーのステンドグラス下の小窓から外を見たり、A列車のロゴが描かれたドアのガラス越しにも車窓を楽しめる。あるいは、先頭部分のデッキに出て、運転席脇の小さなスペースから前面展望をくいいるように眺めることもできる。
そうこうしているうちに列車は海岸線を離れ、トンネルをくぐって宇土半島を横断し、八代海沿岸に出て、終点三角に到着する。
三角駅は、「A列車で行こう」運転開始を機に改装された。とんがり屋根のユニークな駅舎は、ほぼ従来のままで、改札口ののれんや、随所に書かれたMisumi Stationという英文字のさりげないデザインは、車両と同じく水戸岡氏が手掛けたものだと一目瞭然だ。