安保闘争後の若者の無力感を歌う
1972年発売、陽水初のアルバム「断絶」に収録されています。今は一流アーティスト陽水ですが、デビューアルバムということもあり、最初はあまり注目されませんでした。しかし徐々に、この曲が注目されるようになり、衆目を集めることになりました。
この曲の背景は、安保闘争が終焉を迎えたあとで、若い世代を覆った無力感です。そんな時代のなか、今、恋人に会いに行きたい、でも、目の前に傘がない。社会の大きな問題よりも、自分にとって恋人に会いにいくための傘がないことが問題なんだと、大都会に埋没しがちな個人の対比が見事です。
この曲を知ったのは、ラジオで放送していた、井上陽水の楽曲人気投票ランキングによってですが、80年代初頭、確か1位だったと思います。
その後、陽水は明るいポップな曲を多く書きましたが、彼の作風の真髄は、この同じアルバムに入っている「人生が二度あれば」あたりにあると思います。
70年代歌謡曲を振り返る上で、外せない1曲です。