社葬や団体葬など大型の葬儀が行われる会場は、都内に数箇所ありますが、團十郎さんの葬儀は神道で行われたということもあって、宗旨・宗派問わず利用ができる青山葬儀所が選ばれました。
(以下、神道の葬儀のことを「神葬祭」表記で統一します。)
神葬祭の特徴
神葬祭は、あまり馴染みがないだけに(一説によると全体の2%ほど)、言葉が難しく、わかりにくい点もありますが、大まかな流れは結婚式や地鎮祭などと同様、「お払い」→「神饌物(しんせんもの)をお供えする」→「祭詞」「玉串奉奠」など→「神饌物を下げる」といった流れになり、さほど複雑なものではありません。神葬祭の詳細・流れについてはこちら
後ろの幕は壁代といいます。朽木形のデザインなので「朽木幕」とも言われています。
「神饌物(しんせんもの)」とはお供えする食べ物のこと。この日は、水、米、塩、酒、餅、魚(お頭付き)、野菜、果物、海菜(乾物)、菓子などが三方に並べられていました。地域によって多少違いはありますが、大抵は同様の種類の神饌物が用意されます。
銘旗(めいき)には名跡(みょうせき)、諡名(おくりな)には称名(たたえな)
楽人の後ろにあるのが銘旗。楽人が奏でるのは「越天楽」という雅楽。
楽人の裏には銘旗(めいき)といわれる旗があります。銘旗とは亡くなった方の姓名や官位が記された旗のことを示すのですが、本名ではなく「故十二代目市川團十郎」と名跡(みょうせき)が記されている点に注目したいですね。
亡くなった人に付けられる諡名(おくりな・しごう)は、「瑞垣珠照彦命」(みずがきたまてるひこのみこと)。美しく光を照らし出した人生を生きたという意味だそうです。一般の方の場合、氏名の下に成人男性なら「○○之命(○○のみこと)」「○○大人命(○○うしのみこと)」などの諡名になることが多く、團十郎さんのように称名(たたえな)、つまり「その人の徳を称える名」が付けられるケースは最近では珍しいそうです。
会葬礼状には辞世の句
会葬礼状には辞世の句
青山葬儀所の中庭の回廊に沿って、多くの方からいただいた供花の札が芳名版に並んでいました。その数およそ700基。これらの供花もすべて祭壇に組み込まれているため、雑然と並んでいるのとは違い、葬儀所内がスッキリとした印象にまとまっていました。
会葬礼状も、有名人らしからぬシンプルなデザイン&文面だったのですが、右ページに印刷されていた辞世の句で團十郎さんの思いを垣間見ることができます。
「色は空 空は色との 時なき世へ」
昨年12月頃、パソコンに書き残していたという辞世の句。喪主挨拶の場面で海老蔵さんが読み上げ、「初めてそれを見たとき、自分の最期を悟っていたのだな。気づかなかった」と思いを明かしていました。ちなみに海老蔵さんは色を「シキ」、空を「クウ」と呼んでいましたが、これに対し「般若心経からきたものかと思ったが、父は空とか宇宙が好きだったので、色(シキ)、空(クウ)とも読めるので、そう読ませてもらった」とコメントを出しています。