工務店の競争力向上の裏にプレカット材の存在
工場で部材加工を行うことは、施工コストの削減や加工・製造精度の向上、さらには現場作業が少なくなりますからトータルな住宅品質の信頼性につながります。そのため、プレハブ工法はハウスメーカーの成長を大きく下支えし、現在まで続く強みとなってきました。そうなると、現場で材料を加工することが多かった地域の工務店は競争力をなくしてしまいます。そこに登場したのが、プレカット工場の存在でありプレカット材だったのです。地域工務店は独自に工場を持つことなく、安定した品質と精度を併せ持つ材料を調達できるようになりました。
大手のハウスメーカーは全国に独自に工場を持っているのですが、それを維持したり管理したりするコストは膨大です。そうした費用をほとんど負担することなく住宅建設を行えるようになったため、地域の工務店はハウスメーカーより安価に住宅を供給できるようになったともいえるわけです。
住宅取得を検討される方から、「なぜハウスメーカーと工務店ではこんなにも価格差があるの?」と問われることが多いのですが、実はその背景にはプレカット材の普及というのも一つの理由としてあるわけなのです。
前ページでご紹介したように、各工務店などの業者ごとの情報や、それぞれの顧客の情報に合わせて材料を加工するわけですから、プレカット材の普及はコンピュータ技術やIT技術の進歩のたまものでもあるといえます。
そして、そのように管理され精度の高い加工が施されたプレカット材が普及することで、耐震性や施工スピードなど、かつてハウスメーカーが強みとしてきた分野においても地域の工務店はひけを取らなくなってきました。
プレカット材が住宅づくりのトレンドも変えた!
もちろん工務店には多種多様な企業の集まり一概に全てを同列で語ることができませんが、少なくとも地域の有力工務店などしっかりと地域に密着した経営を行っている真面目な会社の場合は、ハウスメーカーばりの信頼性を有しているケースが多いものです。このように書くと、「工務店はハウスメーカーよりお得」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。プレカット材は工務店がよそに依頼するのである一方、ハウスメーカーの部材は自社で責任を持って製造しているものであり、それは信頼性の証であり、大きな価値といえるからです。
ただ、最近では鉄骨系のプレハブメーカーでも、プレカット材を採用した木造住宅をセカンドブランドとして供給するケースも多くなりました。要するに木造住宅を供給する以上、プレカット技術はハウスメーカーでさえ無視できない存在となったということです。
地域工務店の競争力を高める要因となったのがプレカット材。違う見方をすると、その普及は住宅業界をハードからソフトを競う世界に変えたともいえます。わかりやすく説明すると耐震性や気密・断熱性といったハードの部分より、設計力や提案力といった「住まい方」、ソフトの内容が住まいの善し悪しを左右するものになってきたということです。
もちろんアフターサービスなどもソフトに含まれます。そのため近年のハウスメーカーの商品開発はハードに関するものは少なくなり、どのように設計すればより快適な住まいになるか、という提案型のスタイルが主流となってきました。例えば二世帯住宅や子育て・共働き支援などがそれにあたります。
ですので、皆さんは工務店を含めたハウスメーカーの提案を検討する際、その提案が自分たちに適しているのか、将来のライフスタイルの変化を見据えた提案なのか、などにより注目すべきだと思います。
住宅のコストというのは建物の構造を主とするハードはもちろんですが、現在では提案のコストがより大きな位置づけを占めるようになったといえそうです。そして、その契機となったのがプレカット技術の普及なのです。
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