携帯ショップの店員が一躍スターに

2009年度の紅白歌合戦にも出場した英国の歌手、スーザン・ボイル。彼女はイギリスの国民的オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」の出身ですが、同番組で2007年に優勝したのが英国のオペラ歌手、ポール・ポッツ(Paul Potts)です。

彼の番組出場の様子は今でもYouTubeなどの動画サイトで見ることができます。彼は当時36歳で、前歯が欠け、目に活力がなく、シャツの襟の曲がった自信のなさそうな風貌でステージに立ちました。

それが曲の前奏が始まったとたん、人が変わったように視線を上げてキラキラと目を澄みきらせ、見た目からは予想のつかない美しい歌声でオペラの名曲を歌い切る様子は、涙腺がゆるむほど感動的です。さらに決勝戦の映像においては、力強く勝ちに行く魂の歌声で、何度見ても本気で泣けます。

ポール・ポッツは番組出演当時、携帯電話のショップで働いていたという、存在が身近に感じられる人。そんな彼が、歌で才能を花開かせ、夢を叶えて世界的なオペラ歌手になったというストーリーも、私たちにも夢をかなえるチャンスがあることを思い起こさせ、勇気を与えてくれます。

デビューのきっかけにもなったオペラの名曲、「Nessun Dorma(誰も寝てはならぬ)」が人気ですが、映画の名曲を集めたCDも発売されていますし、「ムーン・リバー」や「ある愛の詩」など、オペラ以外の楽曲を収めたアルバムもあり、オペラをよく知らなくても入りやすいのも魅力のひとつ。

巨匠と呼ばれる大物やファンたちが高齢化し、人々の興味が薄れていく中で、彼の存在は、若い世代の新しいオペラファンを獲得し、歴史のある芸術を次の世代へつないでいく大切なキーパーソンと言えます。



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