取組をさばくだけではない、行司の仕事
土俵上で両力士の取り組みをさばく行司さん。古くは「行事」と書いて、相撲という催しを取り仕切るディレクターのような役割を担っていました。そのため現在でも発気揚々(はっきよい)! 残った! 残った!と取組をさばき、勝った力士に勝ち名乗りをあげるという仕事だけでなく番付を相撲文字で書いたり、決まり手のアナウンスをしたり、土俵入りの先導をしたり、取組編成会議の書記を務めたりという仕事もされています。
行司さんは軍配をあげますが、進行役ですので他のスポーツの審判のように勝敗を決める最終権限はなく、物言いがあった場合は勝負審判の協議によって勝敗が決められます。
そして行事さんには力士同様に番付(格)があります。有名なのは立行司(たてぎょうじ)と呼ばれる二人の行司さん。最高位は「木村庄之助」、次位は「木村伊之助」と名乗ることが義務付けられています。
最高位の木村庄之助は、結びの一番のみをさばきます。その際、短刀を腰に差していますが、差し違えたら切腹する覚悟で臨むという意味が込められているそうです。
軍配の房と胸元の菊綴じの色が行司の格を表していますが、最高位の木村庄之助は総紫、次位の伊之助は紫白と決められています。格に応じて身に着けるものや色などが細かく指定されているのです。
幕下以下の行司さんは、直垂(ひたたれ)と呼ばれる装束も木綿で、足も素足で冬などは寒そう。位があがるにしたがって、直垂に刺繍が施された美しいものになっていくのです。
私はお相撲観戦の時、力士を見るのはもちろん行司さんを観るのも楽しみにしています。次回、相撲観戦をされる時は、ぜひ行司さんにも注目して頂きたいと思います。