『小クラマタ』と呼ばれる時計がある
我が家のリビングの壁に18年近く定座の掛時計がある。
一見ただの黒い丸い面・・・・・・その中央に1.5mmほどの細さの白い線(
長針短針)と黒に沈んで見えにくいが怪し気なブルーの点(0時を示す)と線(秒針)そして周囲は細く鋭いシルバーの輪(アルミ、アルマイト仕上げ)で構成されている。
全てのパーツを極限まで削ぎ落としたデザインである。
派手なデザインではないが、存在感があり気になる何かがある。
漆黒の闇の中に見えるか見えないくらいのパーツは『時』を刻み、『時』を示す。
遠巻きに観ているとソレは何もわからず、近づいてよく見ないと時間がわからないコトがある。
まるで『時間』そのものの『存在』を表しているかのようだ。
この時計との出会いはボクがハウジングメーカーの総合研究所で本社や全国のショールーム、ショップのデザインをしている頃。
本社のショールーム用にペントレーやアシュトレーをアルミと木材でデザインし、(株)日南という製作会社にその製作を依頼した。
日南のショップ‘SPIRAL’が東京の六本木にあるAXISビルの地下にあると聞き、早速ショップに行ったのである・・・・・そこで見つけたのが、この時計。
そしてショップの方に時計の事を尋ねるとデザインは倉俣史朗さんとのこと・・・・・偶然ではあるが、とても嬉しい気持ちになったことを記憶している。
(倉俣史朗さんをご存じない方のために・・・彼は日本を代表するインテリアデザイナーであり、おそらくもっとも日本的でアバンギャルドなデザイナーであろう。コラム記事「倉俣さんのFlower Vase」も参照の事)
自分が社会にでてデザインを始めた時、製作依頼をした会社が偶然にも倉俣さんと同じ会社だったとは・・・・・その時からボクはかならず、デザインするショールームやショップの壁にはこの倉俣さんの時計をセットするようになった。