咬み傷による怖さ、きちんとすぐに治療を受けるべし

犬による咬み傷

犬に咬まれた傷口からバイ菌が入って内部が化膿、危うく骨まで腐りかけた指。

いきなり痛々しく、かつ見苦しい画像で申し訳ありません。実は、ガイドの右手薬指の写真です。恥ずかしながら、仕事先で小型犬に咬まれてしまいました。これまで仕事をしてきた中で犬に咬まれたことがほんの数回ありましたが、どれもが消毒液を塗っておけば軽く治る程度のものでしたので、今回もすぐに治るだろうと高を括ってしまったのが間違いでした。数ヶ所あった傷のうち、他はすべて綺麗に治ったのに、一ヶ所だけがどうしても治りません。一旦は痛みと腫れが引いたものの、ある日突然痛みがぶり返し、夜も眠れないくらいになってしまいました。

病院へ行き、診察を受けると、もう少し放っておいたらバイ菌が骨に入り込み、骨が溶けてしまうところだったと言われました。骨が溶けてしまったとなると、手術をしてその部分を切除するか、もっと進行してしまっていた場合には指先切断という可能性もあったのです。自分の愚かさ加減に反省しきりでした。犬による咬み傷は引き裂かれた傷は別として、犬歯が突き刺さった場合など傷口自体は小さいですから見た目の傷口はわりとすぐにふさがる分、内部で菌が繁殖しやすくなるということなのでしょう。

結局、本格的手術は免れましたが、指に麻酔を打ち、皮膚の一部をはがして内部の膿を取り出し、洗浄消毒。しばらく右手が使えなくなってしまいました。その後、抗生物質の投与と、破傷風の注射も打ちました。ちなみに医師曰く、破傷風の注射は一回接種ではその時限りですが、3回接種することで10年単位の効果が期待できるそうです。破傷風は発症すると致死率が20~50%とされる病気。破傷風は世界中で広く自然界に存在しますので、犬に咬まれる危険性がある職種をはじめ、ケガが予測できる職種においては接種しておいたほうがリスクを軽減できるという話でした。

その他、犬に咬まれたことにより感染するおそれのある病気としては狂犬病(国内では1957年を最後に発症はない)やカプノサイトファーガ-カニモルサス感染症、パスツレラ症などがあります。

ともかく、咬まれた直後は流水で傷口を綺麗に洗い、消毒液をつけるのはもちろんですが、ここまでひどくなる前に、24時間以内に病院で処置してもらうのがベストということですね。

飼い犬が人を咬んでしまうと面倒くさいことになる

万が一、自分の愛犬が人を咬んでしまった場合、「傷も小さいし、大丈夫、大丈夫」では済まされない場合があります。

2001年度に厚生労働省によって『狂犬病対応ガイドライン2001』が作成されましたが、各自治体では咬傷事件に対する条例や基準を設けています。東京都の例を挙げると、以下のとおり。

1: 咬傷事故が発生した場合の飼い主の義務
  • 被害者に適切な応急処置(傷の手当、必要に応じて医師受診と治療)を行う。
  • 新たな事故発生の防止措置(犬の隔離、収容、収容できない時は動静監視)をする。
  • 飼養施設の点検修理、飼養管理方法の改善を行う。
  • 事故発生時から24時間以内に、保健所へ届け出る。
  • 事故発生から48時間以内に、その犬を狂犬病の疑いの有無について開業獣医師に検診させる。
  • 検診の結果について、開業獣医師が発行する「検診証明書」により、保健所に報告(提出)する。
2:咬傷犬の検診期間と回数
  • 飼い主のある咬傷犬は、開業獣医師が検診し、登録、注射済犬で、咬傷動機の明確な犬については、検診期間を1週間とし、検診回数を咬傷直後1回、1週後に1回とする。
  • 狂犬病予防注射を受けていない、または不明の犬の場合は、2週間後の1回を加え3回とする。
  • 飼い主不明の咬傷犬は、動物管理事務所に捕獲、収容し、同所の狂犬病予防員が2週間検診する。
(東京都獣医師会編、45周年記念誌、123-124、1994)(*1) 

このように、犬が人を咬んでしまうと咬傷事故発生届出や獣医師による検診が必要になってしまいます。この他、場合によっては被害者に治療費を請求されたり、法的手段に出られることもあるでしょう。実に面倒くさいことになってしまうわけです。

参考までに、1974年度における届出がなされた犬の咬傷事故件数は16,564件であるのに対して、2001年度は6,384件。約1万件減となっていますが、1994年からはほぼ横ばいの状況です。また、咬傷事故件数と犬の登録数密度とを照らし合わせてみると、咬傷事故が多く起こっているのは東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、愛知県、大阪府、福岡県など。2002年度の東京都での発生件数を見ると、総数511件中、最も多かったのが45件の世田谷区、次いで40件の足立区、39件の八王子市でした(*2)。

また、発生状況を見ると、犬舎などに係留中が26%、放し飼いが25%、リードをつけて散歩中が18%、野犬10%、その他が21%となっており、発生場所については公共の場所が53%、犬舎などの周辺が34%、その他が13%となっています(*2)

咬傷事故については意外に多いのが大型犬より小型犬のケース。小さいからたいしたことないだろうという甘い考えをもつのは禁物です。今回のガイドの咬み傷にしても小型犬でさえ場合によっては重大なことになってしまうことがあるのだといういい例でもあります。もし自分の愛犬が大型犬だったら……と想像したら、それがどういうことなのか自ずと理解して頂けることでしょう。大きくても小さくても犬は犬なのです。

オーナーとして咬み癖をつけないようにしつけをしてください。咬み癖が出てしまった場合には、それをなおすように努力をしてください。決して、それを放置しないように。咬むので自分ではグルーミングができないからとショップや動物病院にお願いするのもいかがなものでしょうか。それでは咬まれるリスクを他人に押しつけているようなものです。咬み癖のある犬は誰からも敬遠されがち。可愛い愛犬をそんなふうにしたいですか?


参考資料:
(*1)狂犬病対応ガイドライン2001/厚生労働省
(*2)動物の愛護管理のあり方検討委員会(第3回資料2危害や迷惑問題等の発生状況)/環境省

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。