銀行・郵便局/商工中金の活用法

一世を風靡したワイドの新規取り扱い終わる

「ワイド」、「利付金融債」といっても、大多数の人はそんな金融商品あったけ?と思われるのではないでしょうか。1990年前後に一世を風靡した金融商品で、90年代後半には預金保険制度で保護されるか否かで話題になり、21世紀に入ってからは取扱金融機関が減って行くことしかニュースにならなかったからです。新規の取り扱いが全て終了した今、皆さんの記憶に留めておくためにあえてワイドについて述べることにしましょう。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

お金の悩みに答えるマネープランクリニックガイド

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ワイドってどんな金融商品

ワイドが取り扱い終了

ワイドの新規取り扱い終了

皆さんは、定期預金の預入期間に規制があったのをご存じでしょうか。今でこそ、金融機関が自由に預入期間を決めていますが、1990年代の前半までは、都市銀行や地方銀行などの定期預金の最長預入期間は3年だったのです。3年を超える預貯金を利用するのであれば、ゆうちょ銀行(旧郵便局)の定額貯金(最長10年)、信託銀行の貸付信託やビッグ(5年)、債券発行銀行の利付金融債、ワイド(5年)しかありませんでした。

ワイドとは債券発行銀行が発行する利付金融債(5年)をベースにした商品で1万円以上1万円単位から預け入れることが可能でした。利付金融債の半年ごとに支払われる利息をその利付金融債の利率で半年複利の利息計算を行い、5年後の満期時には預入元本と一括して利息が支払われる商品です。金利は満期まで変わらない固定金利商品であるため、高金利時に名をはせた金融商品だったのです。1990年の金利のピーク圏の時の利回りは9.606%の高利回りであったため、ワイドに入金するために数時間待ちという「ワイド騒動」なる社会現象を起こしたほどの人気商品だったのです。

ワイドを取り扱っていたのは、金融債を発行することができた債券発行銀行で、日本興業銀行(みずほ銀行)、日本長期信用銀行(新生銀行)、日本債券信用銀行(あおぞら銀行)、農林中金、商工中金の5つの金融機関でした。東京銀行(三菱東京UFJ銀行)も金融債を取り扱っていたのですが、預入期間は3年で、ワイドと同じ仕組みのハイジャンプという商品を取り扱っていました。

これら債券発行銀行は、利付金融債(ワイド、ハイジャンプ含む)のほかに、期間1年の割引金融債も取り扱っていたため、もしかすると割引金融債の方が皆さんはなじみがあるかもしれません。

既に時代の役目を終えていたワイド

ワイドを最後まで取り扱っていたのは商工中金です。その商工中金が2012(平成24年)12月27日を持ってワイド(利付金融債、割引金融債)の新規の取り扱いを終了してしまったため、ワイドに預け入れることは出来なくなってしまいました。余談になりますが、筆者がFP(ファイナンシャル・プランナー)業界に足を踏み入れたのが1989年4月。その1年半後にワイド騒動が起こったのですから、新期の取り扱いが全て終了してしまったことには感慨深いものがあります。

そもそも、債券発行銀行は国策的に作られた金融機関取っても過言ではありません。日本の重厚長大産業を育てるために、長期の資金調達を行う金融機関の役目を担うためにワイドという金融商品が存在したのです。その後、規制緩和などにより重厚長大産業を含む大企業の資金調達が多様化したことで、債券発行銀行という存在そのものが時代の役目を終えてしまったのです。

さらに債券発行銀行自体も、ワイドなどの金融債中心の資金調達から、普通銀行のような定期預金中心の資金調達が制約なく出来るようになったことも大きいと思われます。また、90年代半ばからのペイオフ解禁において、保護預かり専用商品以外の金融債は預金保険制度の保護の対象外ということが人気離散に拍車をかけたようです。もちろん、低金利が恒常化したため、預入期間の長い固定金利商品に活躍の場が21世紀になかったこともあげられることでしょう。

その後、債券発行銀行はすべて普通銀行化したため、特例として(細々と)ワイドの発行を認められていたと言うのが現状だったのです。その発行も費えたことから、確定利付きの金融商品、言い換えれば預貯金とくくられる商品の中で、個性的な火がまた1つ消えたと思われてなりません。「預貯金には厳しい」という現実を突きつけられているようです。
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