次期監督候補に……ナベツネからのラブコール
引退を表明した松井秀喜。今後どういった道に進むのか。
巨人・渡辺恒雄球団会長(86)=読売新聞グループ本社代表取締役会長=は1月7日、すかさずラブコールを行った。「原君はまだやるけど、そのあとは松井君が最適だよ。順序としてね。松井君がやってくれたら、そのあとは高橋由伸君とかいろいろいるけど。いま原君のあと、すぐというのはいないんだよ。こっちは大口を開けて待ってるんだよ。いずれ大監督になってもらいたい」と松井氏を次期監督候補と明言した。
それだけに留まらず、原監督の下で帝王学を学ばせる構想も披露。「ヘッドコーチかなんかやってね。だって彼はバッターだから。ピッチャー(の起用法などを)、どうするか。いろいろ研究してもらわないと」。
この球団トップの発言を受け、巨人・原沢球団代表兼ゼネラル・マネジャーは、もっと具体的に話を進めた。現在、松井氏がニューヨークの自宅を生活拠点にしていること、夫人が3月に第1子を出産する予定であることを考慮し、古巣ヤンキースでのコーチ修行を提案する。「うちは前にもやってきた。本人と話し合ってからだが、希望すれば、手助けをしてあげたい」とバックアップ宣言。
巨人とヤ軍は2002年から業務提携を続けており、2005年には岡崎郁氏(現二軍監督)、2011年には大道典嘉氏(現ソフトバンク二軍打撃コーチ)らをマイナーリーグにコーチ留学させている。松井氏がヤ軍でコーチ理論を学ぶことは、もちろん、巨人に大いにプラスになるとの判断からだ。
その前に、3月に行われる第3回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での解説が、松井氏の“初仕事”になる可能性が高い。これほど松井氏にとってうってつけな仕事はないだろう。各国の主力となるであろうメジャーリーガーたちは、メジャーで10年間プレーした松井氏はよく知っていて、投手にしろ、打者にしろ、その分析はお手の物だ。
とくに日本の最大のライバルである米国チームを率いるジョー・トーリ監督は、ヤ軍加入1年目の2003年から5年間、ともに戦った仲。どういう戦い方をするのかは手に取るようにわかるはずで、非常に面白い解説が期待できる。ちなみにトーリ氏は、現役を引退した松井氏について、「彼はチームで何をすべきかを理解できる。いいコーチになれる」と指導者としての適性に太鼓判を押している。
古巣ヤ軍で引退記念イベントも検討されている松井氏。どういう道を進むのか、進みたいのかはまだわからないが、決して焦って(急いで)欲しくない。巨人の監督になるにしろ、その前にネット裏から野球を見てもらいたいし、コーチとして球団に関わってもらいたい。今まで見たこともない世界から、違った角度で野球を見ることによって、指導する上での選択肢や引き出しが大いに増える。
日本ハムの栗山監督は、コーチ経験なしで監督に就任し、昨年、リーグ制覇を果たしたが、それも29歳で引退してから20年間もネット裏で“勉強”した経験がものを言ったからに他ならない。あくまでも王道を歩むためにも、松井氏にはじっくりと事を運んでもらいたい。