雑貨/キッチン雑貨・テーブルウェア

いい木べらについて、考えてみる

あまり何も考えずに購入してしまいがちな木べら。そうやって買って、何本か無駄にしてきた自分。今手元に残っている木べらを前に考えてみます。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド

木べらいろいろ

木べらいろいろ

木べらについて、かつてそれほど考えたことはなく、そのとき売っていたものを適当に買って使っていたのですが、でも長く使っていると、やはり自分なりの使い勝手みたいなものが分かってきました。昔はとにかく、まずは壁に引っ掛けられるもの、と思ってたので、持ち手のしっぽに穴の空いてるものしか選びませんでした。使うときにすぐさっと出せるように、常にキッチンのコンロの近くに下げておくのが便利という理由でした。

これは!と思う木べらに出会ったのは、木工作家・須田二郎さんの木べらを見つけたときでした。須田さんは森のことをきちんと考えた木材だけを使用し、無垢で仕上げたシンプルな木の器が人気の作家さんです。何度か展示は見に行っていたのですが、あるとき、たくさんのボウルや皿の脇に、おとなしそうに置いてあった木べらを、ふと掴んでみると妙に手にしっくりときたのでした。

取っ手の部分が握りやすいように筒状になっており、ちゃんと凹凸の緩やかな曲線状に削ってあります。またヘラ先部分も、先端がいい具合に斜めになっており、すくいやすいような形にほんのり曲がっています。重さが丁度良く、ほっそりと小ぶりな感じも気に入りました。さらに左利き用、右利き用と分けて作られていました(先端の斜めの方向が逆になっていました)。ディティールの部分にとても繊細な気遣いが感じられ、ずいぶんと丁寧な作りだったので、どうしても使ってみたくなりました。後ほどご本人に聞いてみると、これはある料理家さんと一緒に考えて作ったものだそうで、パスタソースを作るときのために考案されたそうです。

木工作家・須田二郎さんの木べら

木工作家・須田二郎さんの木べら

実際使ってみると、まずつかみ心地が良く、鍋やフライパンで長く炒め物をしていても腕が疲れにくい感じです。そして小ぶりでほんのり曲がったヘラ先が、小回りが利き、食材を逃さずキャッチするので、まんべんなく鍋の中を混ぜ、きれいにすくいとることができます。ゴムベラほどではないけれど、普通の木べらに比べるとずいぶんすくいやすいです。例えばニンニクをみじん切りにしたものをできるだけかき取りたいときとか、液状のものをできるだけきれいにすくいたいときとか、程よく斜めでスプーンのように曲がった形が重宝します。

須田さんの木べらの使い勝手の良さはちょっと衝撃的で、何本か欲しいなと思いつつ、個展のときでないと出会えないので、(しかもやはり人気なのですぐなくなる)意外となかなか手に入らないのですが……。夏椿OUTBOUNDなどで個展のときに見つかることがありました(お店に常時は置いてありませんので、店に無理を言ったりはしないでください)。個人作家さんなので、形や木の素材もそのときによって変わることがあります。

宮島の木べら

宮島の木べら

その後に購入した木べらは2本。ひとつは広島県の宮島工芸製作所のもの。宮島はしゃもじで有名で、島へ行くと世界最大のしゃもじ(?!)が展示されていたり、至るところで開運とか商売繁盛的なしゃもじが飾ってあったりします。なんと厳島神社オリジナルしゃもじもあります。幸をすくいとる、という意味で幸運のシンボルだそうです。しゃもじの親戚として、木べらもあちこちで売られていました。

写真のものは松屋銀座で毎年行われている手仕事直売所で見つけました。値段がまずかわいい。400円くらいだったような。調べてみるとミズメという素材で、硬くて弾力がある、古くは弓に使われた木だそうです。確かに僅かなしなりがあって炒めやすいような。適度な軽さなので疲れないのもいいです。あまり重さがあると、長く作業するとき手が疲れてしまうんですよね。へら部分の先端は1mmくらいの厚さで、根元へ行くほど3,4mmになります。全体的に緩やかなカーブに削られているのもいいです。シンプルなかたちですが、やはり昔から作られているせいか、使い勝手にさり気ない配慮があるように思います。実際一番出番が多く、普段使いで色々な料理にじゃんじゃん登場させています。

オリーブの木でできた木べら

オリーブの木でできた木べら

もうひとつは南仏のオリーブの木でできたもの。昨年行ったパリで訪ねた、フランス全土の民芸品を集めた店「La Tuile a Loup (ラ・チュイル・ア・ルー)」で見つけました。オリーブの木べらは日本でも売っているし、南仏へ行くとうじゃうじゃあるので、珍しいものでもないんですが、素朴な風貌がなんだか良かったのと、細身で使いやすそうに感じたからです。オリーブという素材も好きですし、木の模様が美しく感じました。あとはその、フランス全土の手仕事のものを集めた、というその店の心意気がよかったので、店の選択眼を信じてみました。オリーブは結構硬いので、宮島のものよりしなりは少ないですが、これは気分優先ということで、フレンチ系の料理を作るときに使っています。ラタトゥイユとか、ピペラドなどを作るときは、断然オリーブがいい感じ。あくまで気分ですけど。

パリのプロ用料理道具専門店にて

パリのプロ用料理道具専門店にて

お菓子や甘いもの用として持っている木べらもあります。こちらはやはりパリの料理道具専門店「E.DEHILLERIN (ドゥイルラン)」 にあったもの。(実際は合羽橋などでも同様のものが売ってます)。プロ用の道具が揃っているので、訪ねるとテンション上がります。これも細身で先端がくるりと丸まっていて、鍋底をくまなくかき混ぜるのにいいです。私の持っているものはヘラ部分が5.2cmくらいの幅ですが、もっと細身のもあったと思います。液体系に向いてるように思います。ジャムやクリームを作るときとか。

スウェーデンのしゃもじ

スウェーデンのしゃもじ


最後に番外編として、ご飯をすくうしゃもじについて。なんと、家で長年愛用しているのはスウェーデン製。既に10年近く使っている。どこで買ったかもう覚えていませんが、スウェーデンは木工製品が多く作られているので、意外と色んなところで見つかるかもしれません。日本の標準的なしゃもじより一回り小ぶりで、これがなんといっても使いやすい。あと木の滑らかな質感や、見た感じの表情がきれい。木を大切に思うスウェーデンならではのクオリティ。しかしこれ、見た目はどう見てもしゃもじだし、家では長年ご飯に使っていますが、スウェーデンでは一体どのように使われているのでしょうか。

木べらは、重くなく、取っ手の部分の角に丸みのあるものが持っていて手が疲れない、あと先端がある程度細身でヘラ先部分が斜めになっているなど、鍋底をすくいやすいものが使いやすい、という感じがしました。文章で書くと当たり前なことなんですが、意外と意識していなかったことに気付きました。
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