木べらいろいろ
これは!と思う木べらに出会ったのは、木工作家・須田二郎さんの木べらを見つけたときでした。須田さんは森のことをきちんと考えた木材だけを使用し、無垢で仕上げたシンプルな木の器が人気の作家さんです。何度か展示は見に行っていたのですが、あるとき、たくさんのボウルや皿の脇に、おとなしそうに置いてあった木べらを、ふと掴んでみると妙に手にしっくりときたのでした。
取っ手の部分が握りやすいように筒状になっており、ちゃんと凹凸の緩やかな曲線状に削ってあります。またヘラ先部分も、先端がいい具合に斜めになっており、すくいやすいような形にほんのり曲がっています。重さが丁度良く、ほっそりと小ぶりな感じも気に入りました。さらに左利き用、右利き用と分けて作られていました(先端の斜めの方向が逆になっていました)。ディティールの部分にとても繊細な気遣いが感じられ、ずいぶんと丁寧な作りだったので、どうしても使ってみたくなりました。後ほどご本人に聞いてみると、これはある料理家さんと一緒に考えて作ったものだそうで、パスタソースを作るときのために考案されたそうです。
木工作家・須田二郎さんの木べら
須田さんの木べらの使い勝手の良さはちょっと衝撃的で、何本か欲しいなと思いつつ、個展のときでないと出会えないので、(しかもやはり人気なのですぐなくなる)意外となかなか手に入らないのですが……。夏椿、OUTBOUNDなどで個展のときに見つかることがありました(お店に常時は置いてありませんので、店に無理を言ったりはしないでください)。個人作家さんなので、形や木の素材もそのときによって変わることがあります。
宮島の木べら
写真のものは松屋銀座で毎年行われている手仕事直売所で見つけました。値段がまずかわいい。400円くらいだったような。調べてみるとミズメという素材で、硬くて弾力がある、古くは弓に使われた木だそうです。確かに僅かなしなりがあって炒めやすいような。適度な軽さなので疲れないのもいいです。あまり重さがあると、長く作業するとき手が疲れてしまうんですよね。へら部分の先端は1mmくらいの厚さで、根元へ行くほど3,4mmになります。全体的に緩やかなカーブに削られているのもいいです。シンプルなかたちですが、やはり昔から作られているせいか、使い勝手にさり気ない配慮があるように思います。実際一番出番が多く、普段使いで色々な料理にじゃんじゃん登場させています。
オリーブの木でできた木べら
パリのプロ用料理道具専門店にて
スウェーデンのしゃもじ
最後に番外編として、ご飯をすくうしゃもじについて。なんと、家で長年愛用しているのはスウェーデン製。既に10年近く使っている。どこで買ったかもう覚えていませんが、スウェーデンは木工製品が多く作られているので、意外と色んなところで見つかるかもしれません。日本の標準的なしゃもじより一回り小ぶりで、これがなんといっても使いやすい。あと木の滑らかな質感や、見た感じの表情がきれい。木を大切に思うスウェーデンならではのクオリティ。しかしこれ、見た目はどう見てもしゃもじだし、家では長年ご飯に使っていますが、スウェーデンでは一体どのように使われているのでしょうか。
木べらは、重くなく、取っ手の部分の角に丸みのあるものが持っていて手が疲れない、あと先端がある程度細身でヘラ先部分が斜めになっているなど、鍋底をすくいやすいものが使いやすい、という感じがしました。文章で書くと当たり前なことなんですが、意外と意識していなかったことに気付きました。