物価上昇の目標値がインフレターゲット
低迷する日本経済。その元凶としてよくいわれているのが、デフレです。物価が長期間にわたって下がり続けるのがデフレ。ただ、デフレだと何が問題なのでしょうか?物価が下がる
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企業が自社の製品を売るため、他社よりも価格を下げようとする
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価格を安くするために働く人の給料を下げる
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働く人にお金が十分行き渡らなくなる
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安い製品が人気を集める
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企業は製品を売るため、さらに価格を下げる(最初に戻る)
このように日本経済はデフレになり、物価だけではなくサラリーマンの給料も下がり続ける状態が10年以上続いています。このような無限ループがデフレスパイラルで、物価の下落を止めるために設定するのがインフレターゲットです。これは、「将来的に日本国内の物価上昇率を○%にすることを目標にする」と設定します。
安倍総裁は「2%」と発表
日本がデフレ状態にあるということは、インフレ率、あるいは消費者物価の上昇率がマイナスになっていることを意味します。この状態を打破するために、今年2012年2月には日銀が「1%」というインフレターゲットを設定しました。その後、10ヶ月経っても物価は一向に上がる気配がないので、自民党の安倍総裁はターゲット自体を引き上げ、「2%」に設定すると発表しています。
インフレターゲットにおける1%、2%というのは単純に年間の物価上昇率なので、単純にいうと、1%のインフレなら今年1,000円だった商品が来年には1,010円に。2%なら、今年1,000円の商品が来年には1,020円になっているという状態です。
日本はデフレ解消のためにインフレターゲットを導入していますが、これは世界的に見るとかなり稀なケース。インフレターゲットは、高インフレに苦しむ国がインフレを抑制するために導入する場合が多いのです。例えば、年間100%という高インフレの国が、10%のインフレターゲットを設定して、10%以内に物価上昇を抑えようとします。
ターゲットを達成する手段は?
ターゲットを設定した後に問題となるのが、目標を達成する手段。単に目標を設定しただけでは、何も意味がありません。安倍総裁がインフレターゲット達成のために考えている手段が、無制限の金融緩和。これは金額や期限を決めず、ひたすらお札を刷るという政策ですが(この政策について詳しくは「無制限にお金を刷る?金融緩和策でデフレ脱出なるか」を参照)、日銀はそこまで乗り気ではありません。そこで日銀が2%のインフレターゲットを設定しない場合、日銀法を改正して日銀の権限を縮小、政府の金融政策決定権限を拡大することも考えているようです。
実行された場合の影響は?
2%のターゲットが達成できるかどうかはともかく、無制限金融緩和が実行されると、どのような影響が出るでしょうか?物価への影響の前に、まず可能性が高いのが為替市場で円安が進むことです。過去2~3年、為替市場では円がドルやユーロに対して急騰して、円高が急速に進んできました。その間、欧米諸国と比較すると日本はそれほど通貨供給をしてきませんでした。
しかし、ここで日本が政策転換して大規模な金融緩和をすると、これまでのドル売りやユーロ売りの圧力が、今度は円売り圧力となって円安が進むことが考えられます。