スマートハウスはなぜ「省エネ住宅」とみられるようになったのか?
先日、「CUSTOMIZE YOUR HOUSE ~住宅をカスタマイズするためのシンポジウム~」という催しを取材してきました。スマートハウスが今後どのように発展し、さらにどのように活用されていくのか、考えさせられる内容でしたので、今回はこの話を中心に記事を進めていきたいと思います。大手ハウスメーカーの大和ハウス工業と、ソニーコンピュータサイエンス研究所、ヤフーの3社の共催で、専門家を対象にした内容。そのため私なりにかみ砕いて、わかりやすく皆さんにご紹介したいと考えています。
まず、シンポジウムの内容に触れる前にスマートハウスがエネルギー、あるいは省エネと結びつけて考えられるようになった背景について考えてみましょう。スマートハウスが商品化され、認知度が広まったのは昨年のこと。それも東日本大震災以降のことです。
つまり、スマートハウスは社会的な関心がエネルギー問題へと集まった時期に、住宅の分野で対応可能なこととして登場したというわけです。そしてその基幹技術として、太陽光発電や蓄電池を制御する「HEMS」が存在します。
HEMSは、ホームエネルギーマネジメントシステムの略。住宅のエネルギーをコントロールするシステムが搭載されたことで、スマートハウスはエネルギー問題との関連で注目され、イコール「省エネ住宅」というイメージが定着していったと考えられます。
家電・設備がインターネットでコントロールされる時代が到来
さて、今年の秋、スマートハウス分野で大きな動きがありました。それは、家電・設備業界の中で製品の情報通信規格が合意に達し、「ECHONET Lite」(エコーネットライト)という規格が導入されるようになったことです。その後、各家電会社がそれに対応した商品を発売するようになりました。その特徴はインターネットとつながっているということです。よく知られているのが、スマートフォンやスマートタブレットを通じ、外出先からオンオフをコントロールできるエアコン。この他、冷蔵庫や洗濯機などにも広がりを見せています。具体的にはパナソニックの「スマート家電」などがあります。
家電や設備の規格をつくるというのは、要するに「標準化」するということで、それに準拠していれば誰にでも使え、製品やサービスを提供できるということです。そうなれば、私たちの暮らしを快適で豊かにしてくれるこれまでにない製品やサービスが登場する可能性が高まるのです。
また、この標準化された規格が世界に広がれば、現在苦境の中にある家電業界はもちろん、ハウスメーカーなどの技術の海外展開にもつながり、ひいては我が国の経済の発展も期待できる、つまりスマートハウスの分野はこのような期待の下に、現在、住宅企業だけでなく様々な業種の企業が参画しているのです。
シンポジウムでは、このようなスマートハウスの基本的な方向性の確認や、問題点の整理について意見発表・交換が行われていました。その一つとして、家電の規格標準化による問題点を指摘していました。よく言われるのが、スマートハウスの中の個人情報を誰が管理し、どこまで利用するのか、といったセキュリティやプライバシー確保の問題です。
もう一つは、家電の規格が統一された際、その相互動作がうまくいかなかった場合、誰がどのように対応するのかといったこと。例えば、複数のメーカーが異なる製品があり、それらの相互動作がうまくいかなかった場合、どのメーカーのどの製品に問題があるのか、確認するのには高度な知識が必要となります。
ですので、現在各メーカーが持つコールセンターなどでは対応できないケースもある、そんな話も聞くことができました。このあたりがスマートハウスの課題なのです。次のページでは、シンポジウムの中から「住宅」の部分に焦点を当て話を進めていきます。