適格退職年金制度の廃止が、会社の制度の廃止になった人も
また、中小企業を中心に1000万人以上をカバーしてきた企業年金制度、適格退職年金については、2002年4月から10年の経過期間を経て、2012年3月末の段階で廃止されました。この経過期間中に他の企業年金への制度変更が求められていましたが強制力はなく、制度を単純に廃止・終了する企業も少なくありませんでした。この10年間で280万人以上が、企業年金制度や中小企業退職金共済などの外部積立制度に加入していない状態となりました。会社員の数は大きく減っていないことを考えれば、文字通りカバー範囲が下がってしまったということです。
適格退職年金制度の廃止は、社員とOBの受給権を守るための政策でしたが、結果としていえば、多くの会社員の制度がなくなってしまったということです。これは減額以上に厳しい話です。
また、適格退職年金のほぼ3割は中小企業退職金共済に移ったとされますが、こちらはこちらで移ったらすぐ引き下げ、という話ですから、予定が狂ったということになります。
退職一時金はもっと危ない!
外部積立は重要だが引き下げリスク
ときどき「企業年金は危ないけど、退職金は大丈夫ですよね?」という人がいますが、実は退職金も危ない話はたくさんあります。企業年金制度や共済制度はカットの話題が挙がりますが、基本的には外部に積み立てていますので、ゼロになるわけではありません(厚生年金基金の代行割れはゼロの恐れあり)。
しかし、いわゆる退職金制度の場合、社外に計画的に積立準備する義務がなく、実際に現金を有していない場合がほとんどです。つまり、全社員が一気に辞表を出した場合、資金のあてがないのが現状なのです。倒産したときも、退職金はまともにもらえないと考えたほうがいいでしょう。
外部積立はその意味ではとても重要ですが、計画的に積立ようとして予定が崩れると引き下げを求めなくてはならないという矛盾も抱えています。いずれも世の中が右肩上がりの時代に問題とならなかった点が顕在化しつつあるわけです。
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