中小企業の退職金共済はさらに減額へ
2012年11月21日の報道によれば、中小企業の退職金の減額が検討されているようです。これは、中小企業のみを対象とした退職金の外部積立の仕組みである中小企業退職金共済の支給額について、計算方法を見直そうというものです。おそらく、11月30日の分科会で方針が示され、有識者に議論が行われるものと思われます。中小企業退職金共済は36.5万社、329万人の退職金を外部積立するもので(2012年9月末)、3.7兆円の資産があります。しかし、恒常的に積立不足が生じています(2012年3月末で1741億円不足)。これは低金利環境下で保証した利回りが高すぎたことが影響しているものです。かつては4.5%を約束するなど、金利実勢より高い利回りを保証してきたツケと運用の悪化などによります(ただし運用方針はそれほどリスキーではない)。
現状では年1%程度の利息付与を行うとともに、1%を超えた運用実績の半分を付利するとしていましたが(半分は積立不足の償却に回す)、1%の保証利率の引き下げと、超過収益の半分を還元する方式の引き下げが議論されるようです。
中小企業退職金共済の考えでは、過去にさかのぼって減額するというより、これから付くであろう利息を減らすという性質のものですから、日本航空で行われたような過去にさかのぼって半減するような減額とは異なりますが、将来に見込んでいた退職金額が下がることになります。
企業年金制度でも中小企業に逆風
積立不足の問題が深刻なのは厚生年金基金という企業年金制度です。こちらは国の厚生年金部分と各社独自の企業年金部分の2階建てになっており、440万人、約11万社が対象となっていますが、27兆円近い資産を持っています。これも1兆1100億円の不足です(2012年3月末)。国の厚生年金に相当する部分を割り込んでいる基金はほぼ半数です。厚生年金基金については制度の廃止が取りざたされるまでになっており、厚生労働省の別の専門委員会では10年後の廃止に向けた検討をスタートさせています。特に財政状況の悪いところについては、5年のうちに早期の解散を促すとしています。
こちらも国の厚生年金相当分は保証されるものの、解散に至って積立不足が深刻な場合は、OBの独自給付部分は停止するとしています。つまり、減額やむなしということです。確かに国に返すべき資金を割り込んでいる状態において、プラスアルファの給付を継続することができないといわれればその通りなのですが、厳しい話です。
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