かつて、新婚旅行中のトラブルが原因で帰国後にそのまま破局してしまう「成田離婚」という現象が話題になりました。その理由には、性にまつわる理想と現実のギャップから引き起こされる問題も少なからず含まれていたようです。

「性の不一致」を原因とする離婚は後を絶ちません。近年はED(勃起不全、勃起障害)が理由で破局するケースも増えていると聞きます。

生活習慣病の一種と考えることもできるEDは、本当に離婚の理由になるのかどうか。ガイドは法律の専門家ではありませんが、今回は少し目先を変えてED問題を捉えてみたいと思います。


EDを原因とするセックスレスが引き金?

EDにはそれなりの事情があるが、最悪の場合、離婚理由にされることも?

EDにはそれなりの事情があるが、最悪の場合、離婚理由にされることも?

円滑な性交関係が築けないことでパートナーとのコミュニケーションが損なわれる結果、離婚問題に発展してしまうことがあります。これは、性交が単なる肉体的な満足感だけではなく、信頼や愛情といった精神的な要素で左右されることが多いことを物語っています。

女性はEDを生理的に理解しにくいため「勃起しないのは愛情がないから?」と考えてしまいがちです。勃起しないのには相応の理由があるのですが、最悪の場合、これが立派な離婚理由にされることもあるようです。

個人的には、EDが理由というよりも、EDを原因とするセックスレス状態が離婚を招くのではと思います。セックスレスは特に子どもを望む若い夫婦にとっては性的満足感よりも重い問題なので、影響は少なくありません。


「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるのか

では、EDが離婚理由になるのかどうかを法律的な視点で考えてみましょう。民法770条1項によれば、離婚が認められるのは以下の5つです。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

EDの場合は5番目が当てはまります。夫婦間のセックスレスが離婚原因になるかどうかについては、京都地裁が昭和62年5月12日に下した判決が参考になるでしょう。

同判決は「婚姻が男女の精神的・肉体的結合であり、そこにおける性関係の重要性に鑑(かんが)みれば、病気や老齢などの理由から性関係を重視しない当事者間の合意があるような特段の事情のない限り、婚姻後長年にわたり性交渉のないことは、原則として、婚姻を継続し難い重大な事由にあたる」としています。
要するに「セックスレスは離婚原因になる」という考え方が示されているわけです。


EDは離婚理由のイエローカードか

EDを原因とするセックスレス状態はイエローカードとみなされる?

EDを原因とするセックスレス状態はイエローカードとみなされる?

ただし、この判例は「夫婦にとって性行為が信頼関係を保つための大切な要素である」ことを示してはいるものの、性行為がないということだけで無条件に離婚を認めているわけではありません。

また「EDが離婚理由になる」と言っているわけでもありません。セックスレスに至る理由はカップルの置かれた状況によってさまざまです。実際、セックスレスの期間や経緯などの事情は一様ではないので、標準的な線引きができないのが実情でしょう。

EDはあくまでも、セックスレスを招く原因のひとつです。そういう立場で考えれば「EDそのものは離婚理由にはならないが、その結果としてセックスレス状態が続けばイエローカード」と言えるかもしれません。


期待される「離婚抑制効果」

EDは円満な性生活を望むカップルのコミュニケーションを阻む、生活習慣病のようなものです。ですから、性行為を必要としない人にとっては必ずしも病気とは感じられません。

しかし、不妊や離婚の引き金となったり、パートナーとの良好な関係を損ねたり、自信を失わせたりすることは重大な問題です。そうした状態の解消にはシアリス、バイアグラ、レビトラなどのED治療薬が必要となることもあるでしょう。

とりわけ、精神的な理由による程度の軽いEDにはED治療薬がたいへん有効であることが知られています。そればかりか糖尿病や高血圧などに起因する機能性のEDにも有効ですから、専門医や専門機関の診察を受けて正しく用いれば、男性ばかりでなくパートナーにも性的な充実感をもたらします。

ED治療薬にはセックスレスの解消を通じた離婚抑制の効果もあると言えるかもしれません。ただし、前述のように、その有り様はさまざまですから、個々の事例については法律の専門家に相談するようにしてください。


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