頭痛ダイアリーをつけてみて、初めてご自分の頭痛パターンに気づかれる患者さんも多いです
特に頭痛の場合、その性状、重症度、発作回数などは患者さんの主観によることが多く、正確に伝えにくいものです。そこで頭痛外来では、より的確な治療が継続できるように、頭痛ダイアリーが使用されます。
今回は、日本頭痛学会が推奨する頭痛ダイアリーについてお話しします。
頭痛ダイアリーとは
頭痛ダイアリーとは、患者さん自身が記録する頭痛日記です。頭痛ダイアリーの目的は、患者さんの頭痛情報を、より詳細に効率よく、お医者さんに伝えることです。日本の頭痛外来で使用される頭痛ダイアリーは、国際頭痛センター長 坂井文彦先生が考案されました。頭痛ダイアリーの見本
頭痛ダイアリーのメリット
頭痛ダイアリーには、患者さんの頭痛情報が詰まっています。問診だけでは分からなかったポイントも明確になり、より正確な診断につながります。患者さん自身も気づかなかった頭痛の傾向がわかり、頭痛パターンの把握につながります。頭痛パターンが分かれば、患者さんは内服のタイミングがしっかり分かります。服用のタイミングが改善されれば薬の効果が上がり、患者さんの満足度がアップします。お医者さんは、ダイアリーに記入された頭痛の傾向から、患者さん一人ひとりに合うベストな薬を選ぶことができます。
頭痛ダイアリーの記入ポイント
頭痛ダイアリーを記入する時には、以下のポイントを意識しましょう。頭痛ダイアリーの記載方法
■ 頭痛の性状:ズキンズキン、締め付けられる感じ、重い感じなど
■ 頭痛の強さ:重症、中等度、軽症を3段階で表す
■ 頭痛の持続時間
■ 頭痛以外の症状:ふらつき、耳鳴り、めまい、吐き気など
■ 頭痛が起こって薬を飲むまでの時間
■ 頭痛薬の効果:効いたら○、いま一つの効きなら△
■ 頭痛の誘因:運動会、夫の実家に帰った、旅行に行った、飲み会など
■ 生活支障度:日常生活に影響なし~何もできず寝込んだ、まで3段階で記載する
頭痛ダイアリーと生理
女性の場合、生理の日付を記入することが大切です。なぜなら、女性の片頭痛患者さんで最も多いのは、生理の前後に起こる月経関連片頭痛だからです。月経前2日間の片頭痛はいつもの1.7倍起こり易く、重症度も2.1倍重症です(※1)。また、月経開始後3日間は、発症倍率が2.5倍、重症度も3.4倍になります(※1)。普段の片頭痛は1日で治まる方も、月経時の片頭痛はすっきりしない状態が長く続き、吐き気で寝込んでしまう方も多くいらっしゃいます。女性にとって生理関連片頭痛と上手に付き合うことは、生活の質を上げ、人生を快適に過ごす重要なポイントです。頭痛ダイアリーは、患者さんとお医者さんの有用なコミュニケーションツールです。頭痛ダイアリーをつけてみて、初めてご自分の頭痛パターンに気づかれる方も多く、治療成果向上に役立ちます。また、お医者さんは頭痛ダイアリーを基に問診を進めることで、患者さんの主観である頭痛も医学的客観性を持って診療することができます。
【参考文献】
(※1) MacGregor EA, Hackshaw A. Neurology. 2004 Jul 27;63(2):351-3