厚生年金基金の取り扱いの議論が始まる

日本最大の企業年金でもあった厚生年金基金制度が、その廃止を議論されるところまで来ています。厚生労働省の年金制度に関する審議会(社会保障審議会年金部会)は、「厚生年金基金制度に関する専門委員会」の設置を決定し、年内に成案のとりまとめ、来年の国会へ法案提出を目指す構えです。

1966年にスタートし発足から46年を数える厚生年金基金制度は、一時期は1000万人以上の加入者を抱え、国内最大の企業年金として君臨した時期もありましたが、現在では437万人の加入者、約11万社の中小企業が利用する、国内第3位の制度となっています(この4月にで確定拠出年金が加入者数で逆転したとみられる)。

議論のきっかけは、2012年前半を賑わしたAIJ投資顧問会社の事件です。もともと運用環境の悪化の影響を強く受ける厚生年金基金の財政が約2000億円の消失した事件に伴い、大きく問題視されるようになりました。報道によれば、厚生年金基金の廃止を視野に厚生労働省は議論を進める見込みで、11月2日に最初の専門委員会が開催されるようです。

この問題、とかく「天下りが制度を破壊した」等の悪口ばかりが流布していますが、どう考えて着目すべきでしょうか。

中小企業のほうが大企業より負担が大きい制度?

この問題に向き合うとき、少し考えてみたいのは「中小企業支援」としての企業年金政策のあり方についてです。もともと企業体力の乏しい中小企業には多くの補助金であったり財政支援であったりが行われます。これは不公平ではなく、結果として新しいビジネスの勃興を支援したり、地域経済を支えたり、たくさんの雇用を守り創出するために重要な取り組みです。一般論としていえば、中小企業は大企業より優遇されることが多いわけです。

しかし、厚生年金基金問題の現状で私がおかしいと思うのは、「中小企業が加入する厚生年金基金では、“国の厚生年金と会社の退職金は別”としている会社より多くの負担を求められている」という現状です。それぞれの厚生年金基金が独自に運用・管理を行ってきた失敗のツケといえばそれまでですが、業界団体などを通じて加入してきた中小企業に過剰の負担を強いていることは間違いありません。

大企業では企業ごとに厚生年金基金を設立していたものの、代行返上を行い、こうした問題から脱却を図りました。中小企業の取り組みが一歩遅れたものになるのは当然ですが、結果として大企業より中小企業のほうが負担の重い制度になってしまっています。国の厚生年金と同等の給付を社員に受けさせるため、中小企業では国の厚生年金保険料以上の保険料を求められている状況にあるからです。(中小企業の企業年金が大企業の企業年金や国の年金運用より劣るのは当然です。逆になったら国や大企業の年金担当者は立場がありません)

中小企業支援策として厚生年金基金制度を考えた場合、何らかの補助金が出て、制度運営コストや財政運営への支援があってもいいはずですがあまりそういう議論はありません。(たぶん、中小企業支援は経産省や中小企業庁が行い、厚生労働省の分野ではないからでしょう。本当なら、厚生年金保険料より安くて、厚生年金と同等の年金が受けられるような仕組みが、中小企業向けにはあってもいいくらいなのです。

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