貯蓄

将来に備えるのもいいが資金の優先順位をお忘れなく

20代、30代の世代で、金投資やプラチナ投資を始める人が増えているようである。公的年金の不安を反映して、早いうちから将来に備えコツコツ純金積立やプラチナ積立を始めているそうである。「備えあれば憂いなし」と言えるかもしれないが、資金準備は近い将来の出来事(イベント)を優先して行うもの。ましてや、終身雇用や収入すら保証されていない世代が、1番遠い将来に備えるのが本当にいいのだろうか。

深野 康彦

深野 康彦

お金の悩みに答えるマネープランクリニック ガイド

業界歴30年以上となり、FPのなかでもベテランの域に。さまざまなメディアを通じて、家計管理の重要性や投資の啓蒙など、お金周り全般に関する情報を発信しています。 好評連載『マネープランクリニック』にて、ユーザーからの相談に長続きできる無理のない家計管理法をアドバイスしています。

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近い将来の資金準備を優先しよう

20代、30代の人は、生まれてこのかた「実感できるほどの好景気」を経験していないことから、将来のことを悲観している人が多いように思われてならない。確かに、日本の財政状況(筆者も楽観はしていない)、リーマンショックやギリシャショックなどの経済的な有事が頻繁に起こっていることを考えれば、自分たちがリタイアする時にはどうなっているかわからない。時間だけはあるので、早くから将来に備えておこうと考えるのも無理はないことだろう。

余裕があるなら早いうちから将来に備えるのもやぶさかではないが、収入がなかなか増えない今、1番遠い将来のライフイベント(老後)に真っ先に備えるのが本当にベストなのか考えていただきたい。老後を何歳からと定義するのは難しいが、公的年金をもらうことができる年齢と考えれば65歳。最短で26年、最長だと45年という時間がある。

その長い時間の中には、結婚、住宅購入、子どもの教育費などのほか、個々人のライフイベントとして、起業(商売を始める)、留学などもあることだろう。これらのライフイベントは間違いなく、老後を迎える前にやってくるはずだ。これらまとまったお金が必要なライフイベントをクリアできて、始めて老後を迎えることができると言い換えてもいいだろう。老後を迎える前のライフイベントの資金準備は怠っていないのかを確認して欲しい。

残念ながら、ひと晩寝ただけで明日から65歳にイキナリなるということはなく、何十年生きた末に老後を迎えることができることを忘れてはならない。


金やプラチナはワキ役に過ぎない

間違えないでいただきたいのが、老後の準備をしてはいけないと言っているわけではない。近い将来のライフイベントの準備をしっかり行いながら、さらに老後の準備も始めるというなら問題はないだろう。

あるいは、こんな意見もあるかもしれない。老後を迎える前に資金が不足すれば、積立をしている金やプラチナを売るから大丈夫ですと。確かに下手に借入をするよりも有益と思われるが、金は安全資産であると言っても価格が変動する商品。売る時に価格が上昇している保証はどこにもない。いわゆる売却損を被るような状況であったとしても、スパッと売って資金不足に対応できるのか疑問である。

経済有事が頻発しており、通貨が信用できないとあっては金やプラチナなどの実物資産に心が動かされてしまうのも理解できる。とはいえ、金やプラチナは保有しているだけでは収益を生むことはない。預金や債券、または株式などのペーパー資産の価値が下がった時に金などの実物資産の価格が上昇して、ペーパー資産のマイナスを補う効果に期待するものだ。従って、資産の1割程度を目安にとはよく言われているのだが、20代、30代の状況を見ていると金などの実物資産が主役になっている気がするのは筆者だけであろうか?

無理してまでお金を使おう! とは言わぬまでも、なかなか収入は増えず、雇用だって保証されているわけではないと思われる今、将来不安に備えるのも大切だが、収入が減るかもしれないリスク、雇用が奪われるリスクなどと言った、キャッシュフローを脅かすリスクにしっかり向き合うべきだと思うのだが。(そのための金投資! と返されたら筆者はグーの音も出ませんが……)

一度「自分の近い将来」に備えて何が必要なのかを考えてみたいものだ。


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