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AIJ問題の余波は大きい?企業年金脱退裁判の行方(2ページ目)

ある厚生年金基金に加入していた事業所が、脱退の希望を拒否するのは不当と裁判を起こし、勝訴したことがニュースになりました。誤解の多いテーマなので、分かりやすく解説します。

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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厚生年金基金から脱退が相次ぐことは難しい!?

報道で指摘されているように、厚生年金基金から脱退が相次ぐことになるかは疑問だと私は考えます。

まず、長野県建設業厚生年金基金のように、事業所と基金の信頼関係が大きく崩れてしまった基金は他にほとんどないからです。事務長による年金資金の横領を許してしまった事務局の運営体制に疑問が生じていたところ、さらにAIJ投資顧問への運用委託による資産の損失が生じたわけですから、これと他の厚生年金基金とを同列に論じることは難しいと言えます(訴訟時点では横領の問題のみが争点であったため、AIJの問題のみで今回と同様の議論が成立する可能性がある一方、プロセス責任を果たしていた基金については結果としての運用の失敗を問うことは困難とも考えられ、判断は容易ではない)。

また、脱退の可否には大きな前提があります。それは、脱退が認められた際には脱退事業所には規定にもとづき積立不足の応分負担が一括で求められる、ということです。脱退する会社が雇っている社員に関する積立不足分を負担することは、厚生年金保険法にも指摘がありますし、本来の給付に必要なお金を負担せずに脱退だけ認められないというのは当然の理屈です。

今まで脱退を認めろと争っている企業も、基本的には積立不足の負担については同意しています。しかし、これは大きな負担です。仮に社員1人ごとの積立不足が100万円としても、100人の会社であれば、現金が1億円必要になります。現在のように積立不足が生じている時期では、負担額が数億円の規模になることは珍しくありません。この準備ができない中小企業は、そもそも脱退が認められても脱退はできない、ということになります。

おそらく、脱退希望の問い合わせは増えることと思いますが、多くの企業は断念せざるを得ないのではないでしょうか。話はそんな簡単ではないのです。

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