駒込「中里」
駒込駅東口から徒歩2分ほどの場所にある和菓子店「中里」は、明治六年に日本橋に創業し、現在の場所には大正十二年に移転してきました。大丸東京店では、看板商品である「揚最中」と「南蛮焼」(240円)を販売。三代目が考案した「揚最中」は、揚げているといっても少しもくどさがなく、サクッと軽い最中皮が印象的。二枚の円盤のような皮には、表面に伊豆大島産の焼き塩が振ってあり、間に粒餡を挟んでいます。通常の焼き皮よりさらに香ばしく、もち米を使ったサクサクの揚げおかきを連想させます。塩味と餡の甘さのバランスが程よく味わえるこの最中は、雑誌などで著名人から紹介されることもあり、知る人ぞ知る人気商品となっています。1個ずつはもちろん、6個入りからの箱詰めを手土産として購入していかれるお客様も多数いらっしゃいます。
これまでにも、この最中のみ、百貨店の銘菓売場に曜日限定で卸すことがありましたが、常設店での販売は初めてです。
「家族経営の店で、少人数で作っているので、品物を間に合わせることができるかが心配だったのですが、この機会に仕事の流れを見直して、何とか供給できるかなと、やってみることにしました」という、現当主の鈴木俊さん。
サクッと軽い皮の秘密は、最中の皮に衣をつけて高温で揚げることによって、油を吸わせずに香ばしく仕上がるため。表面の焼き塩も、水分を吸ってとける普通の塩と異なり、さらっとした状態でしっかりと旨味ある塩味を主張します。
揚げ油には胡麻油を使用していますが、一口に胡麻油と言っても様々な種類があり、実は、試行錯誤を繰り返しているそうです。同じ油を使っていても、メーカーの製造法や原料となる胡麻の状態などで、油自体が変わってしまうこともあるという鈴木氏。それは、匂いなどでわかるというから、さすが職人ならではの鋭敏な感覚ですね。
伝統の製法と言っても、何も変えないということでなく、仕上がりの味や香りを一定にするため、常に努力を続けていらっしゃるということに、改めて感心させられます。
常温で3日間の日保ちですが、召し上がる時にしけっていたら、オーブントースターかフライパンで軽く表面をあぶってください、ということです。
もう一つの「南蛮焼」は、一見どら焼き風ですが、黒砂糖入りの皮で粒餡を挟んだお菓子。コシの強い国産の地粉を使うことで、より、もっちりとした食感を出しています。今川焼のように型の中に生地を流し入れ、蒸し焼きにします。こちらの餡は、皮に甘みがある分、「揚最中」の餡よりも甘さが控えめです。本店では毎年9月半ば以降、季節限定のうぐいす餡も登場するので、今後、大丸店にも登場するかも知れませんね。
<ショップデータ>
■中里
東京都千代田区丸の内1-9-1 大丸東京店地階
電話 03-3212-8011(代表)
営業時間 月~金 10:00~21:00、土日祝 10:00~20:00
定休日 無休(1月1日除く)
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