円形脱毛症とは
女性も男性と同様、円形脱毛症が発症します
円形脱毛症の頻度・性差・年齢
円形脱毛症の有病率は全人口の0.1%程度と推定されています。男女の差はありません。主として10歳代などに多くみられますが、あらゆる年齢に発症することがわかっています。円形脱毛症の原因
はっきりした原因はわかっていません。家族内発生が多いこと、一卵性双生児に約5割の発症が見られることから遺伝的な要因が考えられています。一方で、ステロイドが治療薬として有効なことから、自己免疫の一つと考えれられています。よくストレスが原因といわれていますが、あまりストレスの少ないと考えられる新生児にも見られることなどから、主たる原因とは考えられていません。なんらかの誘因となっている可能性はあります。円形脱毛症の症状・画像
明らかな前駆症状なしに、主として頭部に脱毛が生じます。形は様々ですが、円形や楕円形の形のものが大部分です。頭部に発症した円形脱毛症
通常は半年ぐらいの経過で自然治癒することが多いのですが、まれに進行し頭部すべてが脱毛したり、頭部以外の眉毛、睫毛、陰部の毛髪などすべての体毛が消失することもあります。脱毛が1ヵ所でなく複数の場所に発生することもあります。
時に爪に陥凹変形が生じることがあります。
円形脱毛症で変形した爪。多数の陥凹変形が見られます
円形脱毛症の種類
円形脱毛症は、以下の病型に分けられます。■通常型円形脱毛症
●単発型:脱毛が単発のもの
単発型脱毛症。脱毛が1ヵ所
多発型脱毛症。複数の脱毛があります
■全頭脱毛症:頭部の毛髪がすべて脱毛したもの
全頭脱毛症。頭髪がすべて脱毛します
■汎発性脱毛症:全身の体毛が脱毛したもの
汎発性脱毛症。眉毛と睫毛が完全に脱毛しています
■蛇行状脱毛症(ジャコウジョウダツモウショウ):頭髪の生え際が帯状に脱毛するもの
蛇行状脱毛症。頭髪の生え際が蛇行して脱毛します
円形脱毛症の見た目・病理
通常、円形脱毛症の診断は脱毛の形、大きさ、性質などで診断がつきます。難しい鑑別診断が必要な場合、病理検査が行われます。円形脱毛症の皮膚標本の顕微鏡写真
円形脱毛症の治療法・薬・副作用
■内服薬セファランチン:1mgが9円の錠剤で、1日3回内服します。副作用はショック、アナフィラキシー様症状、顔面潮紅、蕁麻疹、胸部不快感、喉頭浮腫、呼吸困難、血圧低下、過敏症、浮腫、顔面浮腫、手足浮腫、GOT上昇、GPT上昇、月経異常、眩暈、食欲不振、胃部不快感、発疹、皮疹、悪心、嘔吐、下痢、頭痛、そう痒感などです。
この薬の有効率は60%程度との文献はありますが、他の治療との比較試験ではありません。自然消滅のある円形脱毛症のデータとしては不十分です。しかしながら大きな副作用も少ない点、保険の適応がある点などからよく使用されている薬です。
■ステロイド外用薬
デルモベートスカルプローション:1gあたり37.1円です。毛根の深部には薬が到達しないため、効果が弱いと考えられます。皮膚の副作用として皮膚萎縮、毛細血管拡張症、長期投与で全身の副作用として副腎機能低下などが見られることがあります。
■光線療法
PUVAと省略されますが、Pはソラレン(psoralen)という薬剤の内服、外用後にUVA(長波長紫外線 320~400nm)という光を照射することで治療を行います。副作用として、日焼け、白内障、皮膚癌の発生などがあります。
■ステロイドの内服
プレドニゾロン:5mgで9.6円の錠剤です。1日40-60mgを2週間内服し、減量していきます。内服中は有効な薬剤ですが、中止、休薬で脱毛が再発する欠点があります。副作用ですが、眼圧上昇、緑内障、後嚢白内障、眼のかすみ、中心性漿液性網脈絡膜症、多発性後極部網膜色素上皮症、視力低下、ものがゆがんで見える、ものが小さく見える、視野の中心がゆがんで見えにくくなる、限局性網膜剥離、広範な網膜剥離、誘発感染症、感染症増悪、B型肝炎ウイルス増殖による肝炎、続発性副腎皮質機能不全、糖尿病、消化管潰瘍、消化管穿孔、消化管出血、膵炎、精神変調、欝状態、痙攣、骨粗鬆症、大腿骨頭無菌性壊死、上腕骨頭無菌性壊死、骨頭無菌性壊死、ミオパシー、血栓症、心筋梗塞、脳梗塞、動脈瘤、硬膜外脂肪腫、アキレス腱断裂、腱断裂、過敏症、発疹、月経異常、クッシング症候群様症状、下痢、悪心、嘔吐、胃痛、胸やけ、腹部膨満感、口渇、食欲不振、食欲亢進、腸管嚢胞様気腫症、縦隔気腫、多幸症、不眠、頭痛、眩暈、筋肉痛、関節痛、満月様顔貌、野牛肩、窒素負平衡、脂肪肝、浮腫、血圧上昇、低カリウム性アルカローシス、網膜障害、眼球突出、白血球増多、ざ瘡、多毛、脱毛、皮膚色素沈着、皮下溢血、紫斑、皮膚線条、皮膚そう痒、発汗異常、顔面紅斑、脂肪織炎、発熱、疲労感、ステロイド腎症、体重増加、精子数増減、精子運動性増減、尿路結石、創傷治癒障害、皮膚菲薄化、皮膚脆弱化、結合組織菲薄化、結合組織脆弱化など様々なものがあります。
■ステロイドパルス療法
ソルメドロール:500mgで3,536円です。1日1回500mgの点滴治療で3日間連続で行います。発病6ヵ月以内の場合、有効率が高く、特に急速に進行する脱毛症の治療として使用されます。副作用ですが、上記のステロイド内服と同じです。ただし短期間の使用ですので、大きな副作用は生じません。副作用の点から小児に使用することは安全性が確立していません。
■ステロイドの注射
ケナコルト:10mgで853円です。1回2-10mgの注射を2-4週ごとに繰り返します。副作用としては注射した部位の皮膚萎縮が認められます。
■局所免疫療法
SADBE(squaric acid dibutyl ester)をまず1%の濃度で脱毛部に塗布し、皮膚アレルギーを起こします。1-2週間後から、0.0001%の濃度で脱毛部に塗布し、皮膚の発赤が認められるまで濃度を上げていきます。有効な治療ですが、保険の適応がありません。