男性不妊の最新治療事情
二松:男性不妊の最新治療法をおしえてください。
日浦先生:今お話した無精子症ですが、現在、無精子症に対しての治療は精巣内の精子を採取(TESE)して顕微授精を行う方法しかありません。無精子症には閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症があります。
閉塞性無精子症は精巣で正常に精子が作られているが通り道が閉塞していて精子が出てこない状態なので、精巣の精子はほぼ100%採取できます。一方、非閉塞性無精子症は精巣自体の精子を作る働きの障害なので多くは精子が作られていません。ただ非閉塞性無精子症でも手術用顕微鏡を用いて精巣内の精子を探す(MD-TESE)を行えば20~30%で精子が見つかります。このMD-TESEがこれまでの最新の治療でした。が逆にいえば70~80%で精子は見つからないのです。
これまでは精子が見つからなければ諦めるしかなかったのですが、最近、非閉塞性無精子症のMD-TESEで精子が見つからなかった場合、ホルモン治療を行った後に再度MD-TESEを行うと精子が見つかるという報告が出ました。またMD-TESEで精子が見つからずホルモン治療したところ射出精液に精子が出てきたとの報告も出てきています。
ホルモン治療の薬も特別なものでなく、以前から他の病気に使われている薬です。この治療は無精子症だけでなく、精液中にごくわずかにしか精子がいない方にも精子を増やす効果が期待できるのではと考えています。
全員に効果があるわけではないのですが朗報ですね。当院でもこの治療を行っていく予定です。
また精索静脈瘤を認める無精子症の患者さんで、この精索静脈瘤の手術治療を行うと精子が出現したという患者さんが結構いらっしゃるんですね。最近報告も結構出てきています。なので精索静脈瘤の治療も見直されてきていますし治療をすすめています。治療する事で妊娠率は、最終的には2~3倍ぐらいアップすると思います。
二松:日浦先生は、どういうポリシーで男性不妊治療を行われますか。
日浦先生:不妊症は男性女性それぞれ別々の問題でなくお二人の問題であり、夫の治療が妻を救い、その結果として赤ちゃんがいる。赤ちゃんは二人のものであり二人で対応していくことが大事であるということです。夫婦関係、EDも。そして男は自尊心とプライドで生きているところがあります。そのことを大切にした診療を考えています。
入り口:夫の皆さんも気軽に検査を受けていただきたいです
二松:よくわかりました。赤ちゃんができないのは自分のせいだと悩んでいる妻の方々は、パートナーにも必ず検査にいってもらいたいと、やさしく伝えることが大切ですね。あくまでもやさしく。
男性がたも、検査に行くのはハードルが高いでしょうが、愛する奥様のために恐れず、恥ずかしがらずぜひ脚を運んでいただきたいと思います。
私独自の見解を述べますと、不妊治療に二人で取り組むことで、より夫婦のコミュニケーションが深まります。冒頭にも言いましたが、子供が欲しいからといってしかたなく義務的にセックスするのはいけません。
「不妊治療がうまくゆくコツは愛がすべてです!」
日浦義仁先生プロフィール
泌尿器科、男性不妊外来、ED(勃起障害外来)
関西医科大学附属男山病院泌尿器科 部長を経て日浦クリニック開院
• 日本泌尿器科学会(専門医・指導医)
• 日本生殖医学会
• 日本受精着床学会
• 日本アンドロロジー学会
• 日本性機能学会
■日浦先生のホームページ
■日浦先生のブログ
【関連情報】
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