プロ20年目、メジャー10年目。松井秀の逆襲の時を迎える
松井秀がメジャーに昇格して活躍するには、マイナーリーグで勝負強さ(打点)を発揮し、守れることも証明する必要がある
「今はユニホームを着て、またプレーできるチャンスを得ましたので、レイズに対する感謝の気持ちでいっぱいですし、あとはメジャーに上がってプレーできるように頑張るだけです」
松井秀が醸し出した悲壮感は、察して余りある。選手生活20年目でキャンプ開始までに所属先が決まらなかったことは初めてだったし、シーズンが始まってもお呼びがかからなかったことなどもちろんなかった。確かにアスレチックスのユニホームを着ていた昨年、打率.251、12本塁打、72打点という成績は評価を下げた。また、とうに“バブル”がはじけているメジャーでは、DH(指名打者)タイプの選手と契約することを避ける傾向にある。新たにDHタイプの選手を獲得するよりも、既存の選手を守備から休ませる意味合いでDH枠を利用するチームが増えているのだ。したがって、DHタイプに選手はどこか守れることとよほどの勝負強さを持っていないとメジャーで好条件での契約を引き出せなくなっているのである。
松井秀は勝負強さに定評がある。“爆弾”といわれる両ヒザもここ2年間は再発していないため、左翼も守れないわけではない。今後、メジャーに昇格して活躍するには、3Aダーラムで勝負強さ(打点)を発揮し、守れることも証明する必要がある。
「マイナー契約は、現時点での僕自身の現状です。初めて具体的なオファーをいただいた。きっかけはそれだけです。レイズはここ数年非常にチーム力が高く、プレーオフにも出ている。チーム力に驚きはない。チームからは『メジャーに上がったらチームの力になってほしい』と言われました。迷いはない。体の状態は非常にいいし、守備をやるつもりです。ただプレーがしたい、まだ野球がしたい、という気持ちだけの気がします」
もし、このままどの球団からも声がかからなかったら、「引退」の2文字が頭をよぎっていたかもしれない。しかし、日本球界への復帰は全く考えていなかった松井秀。レイズへの恩義を胸に、プロ20年目、メジャー10年目でゴジラは逆襲を誓っている。