思わず涙する切ない物語「クロスファイア」
宮部みゆき作品を読んだことがない人におすすめしたいのが、私がはじめて読んだ彼女の作品、「クロスファイア」です。実はミステリーとか推理小説というものが、ちょっと苦手で……。探偵が最後に全部説明してくれてるのに、結局、どうして犯人がわかったのか、さっぱり理解できないのです。何時何分に誰がどこで何してたの、そのときドアの鍵はかかってたの、かかってなかったの、そういう細かい話が頭に入らなくて、めんどくさくなって途中で投げ出しちゃうんですね。
でも「クロスファイア」と、その後すっかりはまってほとんどすべて読みあさった宮部みゆき作品は、息もつかせぬ怒涛のストーリー展開だったり、思わず涙する切ない物語だったりで、推理小説に対して抱いてきたイメージを根底から覆すものでした。SF要素が濃厚なのも、SF好きの私にぴったりでしたし。
おすすめの『クロスファイア』は、念力で超高熱の炎をあやつる女性が主人公。自分の超能力は法によって裁かれない凶悪な犯罪者に裁きを下すためにこそ使われるべきだという正義感と、自分に罪を裁く権利があるのか、ただ暴力の欲求に身を任せているだけではないのか、という疑問との葛藤に悩みながら、わずかな手がかりを頼りに犯人を追う、ストーリーです。