柔らかな印象を与える車内
では、ドアから車内に入ってみよう。両開きの自動ドアではあるが、寒冷地仕様として、乗降がなければ閉じたままになるよう、ボタンで開閉する半自動になっている。入って驚くのは、床が不燃の木製でフローリングとなっていること。ぬくもりを感じさせる落ち着いた雰囲気を演出している。冬季や雨の時に滑らないよう、ドア付近の床は対策を施している。
座席はすべてロングシート。モケット(座布団)のデザインを数種類用意し、同一車両内でも座る位置によって異なり、変化をもたせている。
ドア脇の戸袋や連結部分の壁には、6000系をはじめとする富士急の車輛イラスト画が飾られ洒落たギャラリーとなっている。吊り革も木製に交換、床のフローリングと合わせて居間にいるような気分にさせてくれる。
優先席や車端部のちょっとしたくふう
面白いのは優先席だ。優先席を表す赤いステッカーが何枚も貼られた上に真っ赤な吊り革がぶら下がり、存在をアピールしている。還暦の赤をイメージしたのだろうか?優先席は車端にあるので、別の車両へつながる連結面がある。その通路には「のれん」が掛けてある。これは、今や水戸岡デザインの定番となったもので、思わず微笑んでしまう。「のれん」には、ダークブルー地に白抜きで6000系のロゴと通勤電車を意味するCommuter Trainの文字が表記されている。
また、ドア脇の満員時に人が立つ部分は、従来金属のパイプのみで、もたれるとシートの端に座っている人を不快にさせたものだった。これを防ぐため、直接触れ合わないように半透明のアクリル板を取り付け、ここにもFujikyu Commuter Trainの文字を入れている。単純なことだが、デザイン化しているのには感心してしまう。
大都会で通勤通学用に使われてきた205系は、機能一点張りの無味乾燥とも思われてきた車両だが、ちょっとしたデザインの変更で、かくも興味深い車輛に変身できるとは、さすが水戸岡マジックのなせる業である。