上屋がどんなカタチになろうともミニに見える
というわけなので、クーペベースのソフトトップ・オープン仕様、がロードスターである。なかみについて、新たに格別云々する必要はない。クーペがベースだから、Aピラーはコンバーチブルより13度寝かされ、よって車高も低い。開けていても、閉めていても、ひらべったく這いつくばっているようにみえる。トップはブラックのみ、だから、よけい薄くみえている。
このクルマがミニである、という認識づくりは、でかい丸ライトと台形グリル、ブラックモールのフチ取りだけで既に達成されているから、上屋がどんなカタチになろうと、そしてミニ史上初の2シーターオープンであろうと、何が何でもミニに見える。不思議でも何でもない。もっと過激なスタイルのクーペでもしっかりミニに見えていたわけだから、当然だ。
インテリアも、またしかり。デザインの話でいうと、外観におけるミニらしさの現代的解釈とその表現手法よりも、内装の個性というか遊びの上手さの方が、ミニ人気を底支えしているような気がしてならない。インテリアデザインをおろそかにしがちな国産車に愛想が尽きた一部センシブルな人たちが、ミニにあって国産車に足りない“何か”を見つけた。そう、体重計のようなダッシュボードに、スポーティでラグジュアリィな厚手のパイピングシートに、クロームや色使いの新しさに。
ちなみに、幌は、イマドキ、手動。ラッチを操作して、ガバッとうしろへ畳む。お手軽だが、乗り込んだままの開閉操作は、アクロバチックでちょっと難しい、というか、よっぽどタッパがあるドイツ人か手足の長いイタリア人じゃないとムリ。米英向けには、セミオート(ラッチ解除のみ手動)式も用意されている。電動の力を借りれば、閉めるのに8秒ほど。日本向けにも欲しいところだ。
古典的なエンジンカーの悦びに満ちている
クーパーには最高出力122ps/最大トルク160Nmを発生する1.6リッターを搭載。クーパーSは184ps/240Nm(オーバーブースト時は260ps)の1.6リッターターボ、JCWは211ps/260Nm(280Nm)の1.6リッターターボとなる
試乗車は、クーパーSの6MTだった(パワートレインラインナップはクーペと同じになるはず)に、ほか。1.6直噴直4ターボエンジンの実力に関しては、すでにお馴染みのもの。3ペダルでもカジュアルに扱えて従順、踏めば“かっ飛び”の万能タイプ。派手なサウンドとあいまって、古典的なエンジンカーの悦びに満ちている。
特に屋根を開けて、オプションのスポーツモードスイッチを押して走ってみたら、いったいどんなスポーツカーを運転していたんだっけ? と耳を疑ってしまうほど、迫力の疑似バックファイア音が背後から聞こえ、ドライバーの気分をいっそう盛り上げる。スポーツカーは音が命、とはよくいったもので、そんなちょっとした演出があるだけで、いっぺんにこのクルマのことが好きになってしまった。
ライドフィールはといえば、ソリッドだけれどもクーペよりもわずかにリキみのとれた、ほどほどの硬さ。石畳ではちょっとツライが、郊外路は痛快。FFであるにも関わらず、リズミカルにひとつひとつのコーナーをこなす様子は、FRのBMWに遜色はない。
クーペ譲りのフラットな“ミズスマシ”感覚
もちろん、フラットなミズスマシ感覚はクーペ譲りで、これぞ“ニュー”ミニ! な走りである。軽いタッチで吸い込まれるようにしてキマるスティックシフトも、今あらためて操ってみたいという気分に十分させるものだった。高速道路でのハイスピードクルーズも、難なくこなす。ひとことで言って、ダイナミック性能のレベルが高い。とくに、ステアリングフィールの気持ち良さが印象的だ。ところからしても、ミニはBMWの傘下になって良かったと、心から思う。ローバーとか、MGとか、どうなるのかなあ。
クーペが苦みばしったカッフェエスプレッソだとすれば、ロードスターはカッフェマッキャート。ひとしずくのミルクが、苦みにほどよい心地よさを加えた。