走りそのものは3ドアと変わらず
搭載されるガソリンエンジンは最高出力86psの1.2リッター直噴ターボ、122psの1.4リッター直噴ターボ、140psのCOD付き1.4リッター直噴ターボ、185psの1.4リッター直噴ツインチャージャー(ターボ+スーパーチャージャー)
残念ながら、日本市場には最初に入ってくる予定の、122ps仕様1.4TFSI + 7Sトロニックの試乗車はなかった。その代わり、用意されたすべてのエンジン仕様に試乗してきたので、“走りそのものは3ドアと変わらず”を大前提に、珍しい仕様のインプレッションも交えて報告しよう。
まずは、メカニズム的にも最も気になる(2) 1.4TFSIのCOD付きSトロニックから試した。早晩、これが上級グレードとして日本へもやってくること見越しての、122ps仕様の先行導入であろう。A1において、シンボリックなパワートレインになることは間違いない。
違和感のないシリンダーカットオフ
パフォーマンスは、すでに馴染みのある122ps版よりも18ps/50Nmもパワー&トルクのあるエンジンであるから、とうぜん、元気のよさでこれまでのA1イメージを覆す。とくに、トルクアップが利いている。50Nmの差は、たかだか1トンちょいの小型車にとって、“莫大”な違いで、とろとろと流しているようなときにパンとアクセルペダルを踏み込んだときの力のツキがまるで違う。軽快を超えて、俊敏だ。スポーツサスとの相性もいい。気になるのは、シリンダーカットオフの前後だろう。A1用のCODシステムは、2つの異なるカムプロフィールをもつスリープエレメントが電磁アクチュエーターでカムシャフトを包み込み、意図的に2気筒めをゼロリフトにしてバルブを作動させず、同時に燃料も噴射しないことによってシリンダーを停止するという仕組みだ。2気筒で走っているのか、4気筒なのかは、モニターによって確認できる。
というのも、事実上、2気筒の走りをモニターなしで感知することは、難しい。1400~4000回転のあいだで低~中負荷(トルクで25~75Nm)のクルーズ走行中のばあいのみ、両端のシリンダーだけが回る状態になる。ショックや音の変化などはなかったに等しいし、4気筒への復帰もごく自然に行われるから、ドライバーは特に違和感を感じることなく、効率的な運転を実践できるというわけだ。
ちなみに、アクセルペダルセンサーとの連動で、たとえばランナバウトや短い郊外路を高速移動する場合など、特殊な走行時間が比較的短めに終わると計算された場合には、シリンダーがシャットオフされることもないという。また、下り坂やブレーキ中も作動しない。
意外に好印象だったエントリーモデル
クルマとして、最も好印象だったのが、(5) の2.0TDI+6MTだ。なんせ320Nmの最大トルクを誇る。ガソリン高出力の(3) も力強かったが、エンジンを回して楽しむというならともかく、1.4ターボじゃそうもいくまい。だったら、中間域のもりもりトルクに載せてかっとんだ方が楽しい。その力強さは、そうとうなもので、街中では5速入れっ放しのオートマ走行だってできるほどだった。こういうエンジンなら、MTだってラクに走れるというもの。(4) の1.6TDIも、力強く走ったが、エンジンフィールが古くさく、いかにもディーゼルっぽい音がした。
意外に良かったのが、(1) の1.2TFSI。非力かと思いきや、5MT+ノーマルアシ+17インチで、軽快に走る。MTであることが利いているのだろう。街中で別段、遅いと感じることはなかったし、逆に、めいっぱい踏んで走れるぶんだけ、楽しいとさえ思った。鼻先が軽く、乗り心地もバツグンにいい。言ってみれば、ポロのような乗り味で、モダンアウディらしい“テキパキ”としたアシさばきではなかったが、これはこれでよくできた実用車である。
ドアが短くなったから、狭い場所での乗り降りもずいぶんとラクになった。そういう意味では、たとえひとり乗りであっても、機動性は格段に増したというべきか。スタイルのまとまりもいいから、後に人を載せることなんてほとんどない、という方でも、こちらを選ぶケースが多くなるだろう。