孤独に戦った永遠のヒーロー、セナ
ブラジルといえば、やっぱりこの人、アイルトン・セナを忘れてはいけない。フィッティパルディ、ピケに続き、ブラジル人3人目のワールドチャンピオンに輝いた「F1史上最高のドライバー」と形容される名選手だ。ロータス時代の若きアイルトン・セナの走り
【写真提供:LOTUS Racing】
ドライビングに対する探究心は誰よりも強く、アクセルを小刻みにあおる「セナ足」と呼ばれた独自のドライビングスタイルを作り出し、勝利に向かって邁進した。類希なる才能は早くから開花し、F1でいきなり速さを見せるも、出る杭は打たれるかのごとく、ヨーロッパ人ドライバーや関係者との政治的な争いに巻き込まれることも多かった。そして、それを跳ね退けようとする情熱のドライビング、攻めの姿勢は多くのファンの心を捉え、当時F1ブームに沸いた日本でも多くのセナ・ファンが生まれた。
ホンダコレクションホールに展示されているアイルトン・セナが駆ったマクラーレンF1。マールボロのカラーリングでセナを連想する人も多いだろう。
国をあげての応援、熱狂。その情熱が彼らを強くする。
アイルトン・セナは1994年にレース中の事故で亡くなり、ファン・マニュエル・ファンジオは2005年に他界している。共にそれぞれの国で、「国葬」で天国に送られた英雄である。こういったラテンアメリカ出身の歴代のドライバーを見ても分かる通り、ラテンアメリカ諸国の国々は自国のヒーローを「国をあげて」応援している。そこにはヨーロッパに勝ちたいという反骨精神のようなものもきっとあるだろう。多くのドライバーは裕福な環境の出身だが、環境の壁をも越えてヒーローを全盛期だけなく最後まで応援し続けるファンたちは彼らの大きな支えになっていることは間違いない。それもバリチェロやピケなど長年活躍するドライバーが多い理由のひとつだろう。
ブラジルGPのファンは熱狂的な応援が特徴【写真提供:PIRELLI】
近年では経済成長の見込める地域として大きな注目を集めるラテンアメリカ諸国。メキシコのセルジオ・ペレス、ベネズエラのパストール・マルドナードなど多くの自国スポンサーマネーを集めてF1に進出してきている若手も目立つようになってきた。今後はこういった国々のドライバーはチャンスがたくさんあり、また再びラテンアメリカ人F1ドライバーの全盛期が近いうちにやってくる可能性が高い。
ベネズエラ出身のドライバー、マルドナドの走り
【写真提供:PIRELLI】
愛されるキャラクターが多く、個性あふれるドライビングスタイルで魅了し、いつも忘れられない存在。そんなラテンアメリカのドライバーたちのエネルギッシュな活躍に大いに期待したい。